岩屋外務大臣会見記録 (1月7日17時14分)

1.7 (火) 22:40
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冒頭発言

新年の抱負

【岩屋外務大臣】まず、謹んで新年のお慶びを申し上げたいと思います。昨年も大変お世話になりました。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 令和7年、最初の記者会見でございますので、私(岩屋大臣)から、抱負を、冒頭申し述べさせていただきたいと思います。
 本年の干支は、乙巳(きのとみ)でございます。困難があっても、紆余曲折を経て前に進んでいく、努力によって物事を安定させていく、そういう意味があるそうでございます。今年も、国際情勢の激動が予想されますが、だからこそ、「対話と協調の外交」によって、世界を分断から協調に導き、我が国と地域の平和を守り抜いていく、その決意で外交を進めてまいりたいと思います。
 先刻、米国のブリンケン米国務長官と会談を行いました。ブリンケン長官との間で、地域情勢や安全保障、経済、同志国連携といった幅広い分野にわたりまして意見交換を行い、かつてなく強固になった日米関係を、今後とも維持・強化していくことの重要性を確認したところでございます。
ブリンケン米国務長官の、この4年間に及ぶ日米同盟強化のための御尽力、あるいは、国際情勢に対する果断な対応に対して、心から敬意を表したいと、感謝申し上げたいと思います。
 今月には、米国で第二期トランプ政権が発足いたします。トランプ次期政権との間でも、率直に議論を行いまして、強固な信頼関係・協力関係を構築していきたいと考えております。日米同盟は、我が国の外交・安全保障政策の基軸でございます。これを、更なる高みに引き上げていく努力を行っていきたいと考えております。
 そして、ウクライナでは、ロシアによる侵略が継続しております。昨日の北朝鮮による弾道ミサイル発射を含めまして、我が国を取り巻く安全保障環境も一層厳しさを増しております。日米同盟を基軸に、同盟国・同志国との連携を進め、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンの下に、「法の支配」に基づく国際秩序の堅持に向けて、あるいは再構築に向けて、しっかりと役割を果たしていきたいと思います。
 また、本年は、国連が創設80周年を迎えます。国際社会の分断を防ぎ、協調を促していくために、「グローバル・サウス」との連携も、引き続き、重視してまいります。本年8月に、横浜で開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)など、様々な機会を通じまして、きめ細かな対話を進めてまいりたいと思います。
 私(岩屋大臣)は、今年の書き初めで、「雲外蒼天」という言葉を書かせていただきました。雲の外には、蒼い空が広がっている。困難を乗り越えた先には、明るい未来が待っている。このことを固く信じて、本年1年、外交に取り組んでまいりたいと思います。皆様の一層のご指導ご鞭撻を、よろしくお願い申し上げます。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

日本製鉄によるUSスチール買収

【日経新聞 馬場記者】冒頭でも発言ありましたけれども、ブリンケン米国務長官との会談についてお伺いします。日本製鉄によるUSスチールの買収について、岩屋大臣から、今回の会談でも話題を提起されたかと思います。日米相互の投資というのは、本来、相互の経済にとってプラスの話であって、経済関係の強化を日米は進めてきたはずですが、そうした中での今回のバイデン大統領の買収禁止の決定を受けて、大臣からブリンケン長官に、どのような対応を求められて、また、長官の方から、どういったご説明があったのでしょうか。この話題に、どのくらい時間を割かれて議論されたのかも含めて、可能な範囲でお伺いします。

【岩屋外務大臣】冒頭申し上げたように、今日の日米外相会談は、極めて多岐にわたるテーマについて、議論、そして意見交換を行いました。
今、お尋ねになったUSスチールの件は、その中の一つでございますが、この局面において、これについては触れざるを得ないという考えで、私(岩屋大臣)から問題提起をさせていただいたところでございます。
 ブリンケン米国務長官との間では、経済分野についても、このUSスチールの問題に限らず、意見交換を行いまして、日本企業による対米投資を含む、日米関係の重要性については、改めて確認をしたところでございます。
 私(岩屋大臣)からは、日本製鉄によるUSスチール買収をめぐっては、日本から米国への投資は、両国にとって利益のあることだと、当方は考えているだけに、USスチールの労働者側からも本件を支持する声が上がっていた中で、今回、国家安全保障上の懸念を理由として、買収を禁止する判断がなされたことは、極めて残念であるということを申し上げました。
 また、日米双方の経済界、とりわけ日本の産業界からは、今後の日米間の投資について、強い懸念の声、心配の声が上がっておりまして、これは、我々としても、重く受け止めざるを得ないと思っております。
 こうした観点から、今回の会談におきましても、こういった懸念の払拭に向けた対応を、米国側に求めたところでございます。それ以上の詳細については、外交上のやり取りでもありますので、お答えをお控えさせていただきたいと思います。

トルドー加首相の辞意表明、G7の結束

【読売新聞 植村記者】あけましておめでとうございます。カナダのトルドー首相が、辞意を表明されました。G7で最も在任期間が長いトルドー氏の功績、これまでの功績をどのように考えて、今回の辞任について、どのように受け止めているか伺います。また、G7の首脳をめぐっては、ここ1年で、数人が交代をするなど、そういう状況が起きていますが、結束を弱めないために、どのような取組が必要だと考えていますでしょうか、よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】今お話のあった、カナダのトルドー首相の進退に係る発表は、承知しておりますが、他国の内政に関わることでございますので、コメントをすることは控えたいと思います。
 日本とカナダは、インド太平洋地域の重要な戦略的パートナーでございます。 G7のメンバーとして、政治、経済、安全保障、人的交流など、幅広い分野で密接に協力しております。この間、そのG7のメンバー国のリーダーとして、御尽力をいただいてきたトルドー首相には、心から敬意を表したいと思っております。
 G7は、価値や原則を共有する同志国の集まりでございます。国際社会が、様々な課題・問題に直面している中で、このG7の結束というのは、これからも大変重要だと思っております。「法の支配」が貫徹した国際秩序を維持していくという意味で、やはり、G7の結束・協力というのは、非常に重要だと思っておりますので、今後とも、本年は、カナダが議長国ということでございますので、各国のリーダーとしっかり意思疎通を行って、G7の一層の連携強化に向けて、我が国としても、尽力していきたいと考えております。

核兵器廃絶に向けた取組

【NHK 広内記者】核なき世界の実現について伺いたいと思います。日本政府は、かねてから、NPT体制を重視する立場ですけれども、ノーベル平和賞を受賞した被団協や、連立を組む公明党からは、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を求める声が高まっています。石破総理も検証する考えを示していますけれども、この戦後80年となる今年、日本政府として、どういうアプローチで核廃絶に取り組む考えなのか、特に、2大保有国である米国のトランプ次期大統領や、ロシアのプーチン大統領に、どう働きかけていく考えなんでしょうか。

【岩屋外務大臣】まず、被団協さんの「ノーベル平和賞受賞」については、改めて、長きにわたる御取組に、心から敬意を表し、また、祝意を申し上げさせていただきたいと思います。
 我が国は、戦後一貫して、平和国家として歩んでまいりましたし、唯一の被爆国として、最終的に「核兵器のない世界」を実現していくということが、我が国の使命あると考えております。
 一方で、御案内のとおり、我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が、誠に残念で遺憾なことに、急速に進展しているという状況にございます。その意味で、我が国は、戦後最も厳しい安全保障環境の中にあると申し上げても過言ではないと思っております。
 したがいまして、政府としては、抑止力を維持・強化しつつ、この安全保障上の脅威に、適切に対処していくという前提に立って、核兵器国、また、非核兵器国が幅広く参加する唯一の枠組みであるNPT体制というものを、大切に考えてまいりました。今後とも、米国次期政権とも緊密に連携しながら、核軍縮、あるいは核兵器のない世界に向けた、現実的で実践的な取組を行っていきたいと考えております。
 御指摘の、核兵器禁止条約につきましても、今申し上げた考え方の下で、いかなる対応が適切かということを、現在、予断なく検証しているところでございます。今後とも検証を続けて、しかるべき時期に判断していきたいと思っております。
 また、ロシアにつきましては、ロシアがウクライナ侵略の文脈において、核兵器の使用を示唆するような言動を繰り返していると、これは極めて憂慮すべきことであり、遺憾に考えております。ロシアによる核の威嚇、ましてや、使用は、断じてあってはなりません。今後とも、ロシアへの働きかけを含めて、あらゆる機会を捉えて、外交努力を払ってまいりたいと考えております。

在日米軍の綱紀粛正

【琉球新報 明(あきら)記者】米兵による、事件の再発防止について伺います。昨年11月に、沖縄県内で、学校法人のドアを壊したとして、建造物損壊などの容疑で書類送検された米海兵隊上等兵が、12月にも、別の器物損壊事件で逮捕されていたことが分かりました。同一人物が、2か月間で2度も摘発されたことについて、「リバティ制度」の実効性がどう影響しているか、大臣の見解を教えてください。また、従来の対策では、米兵の綱紀粛正につながっていないと思われますが、更に強い対策を求める考えはありますでしょうか。

【岩屋外務大臣】まず、御指摘のように、同一人物が、2か月間で2度も摘発されたということについては、誠に遺憾に思っております。あってはならないことだと思っております。
 重要なことは、見直しされた「リバティ制度」を含む、米軍が発表した一連の再発防止策、これが、実際に、事件・事故の防止につながるということでございまして、これまでも、私(岩屋大臣)からも、在日米軍司令官等に対して、この綱紀粛正、また、その対策の遵守といいますか、しっかりと履行してもらうように働きかけてまいりましたが、引き続き、強く申し入れていきたいと思っております。
今般の事案の発生を受け、米側には、既に遺憾の意を伝えるとともに、綱紀粛正と再発防止を申し入れておりますが、引き続き、様々な機会を捉えて、私(岩屋大臣)からも、申入れを行っていきたいと考えております。

シリア情勢

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
最近のシリア情勢に関し、早期に対シリア制裁を解除する予定はありますか。また、日本はシリアに対してどのような制裁を行ってきましたか。また、現地大使館のレベルを大使級に引き上げ、欧州の外相らによるシリア訪問のような、要人訪問の予定はありますか。ありがとうございます。

【岩屋外務大臣】シリアにおける、一連の事態の推移を、私どもも、重大な関心を持って注視しております。
 我が国は、これまで、どういうことをやってきたかということですが、安保理テロ制裁委員会の指定を受けて、シャーム解放機構を含む団体や個人を、外為法等に基づく資産凍結等の措置の対象に指定してまいりました。
 また、シリアのアサド政権関係者等に対しましても、外為法に基づく措置を実施してきております。
 この制裁については、安保理テロ制裁委員会を含む国際社会のこれからの議論も注視しながら、適切に判断してまいりたいと思います。
 私どもとしては、シリアの、何よりも国民の皆さんにとって、より良き状態が創り出されることを望んでおりまして、その動向を見ていきながら、適切に、我が国としても、この制裁についても、判断してまいりたい。つまり、解除をするということも含めて、適切に判断してまいりたいと考えております。
 日本政府としても、これまで、いわゆる今の暫定政権、暫定政権の関係者と接触してきておりますが、その対応ぶりについて、今後の対応ぶりについては、予断をもって申し上げることは控えたいと思いますが、全ての関係者が、シリア国民による、対話を通じた、包摂的な政治的解決に向けて、建設的な役割を果たすということを期待しておりますし、シリアにおいて、平和的で安定した政権移行が行われることを期待しております。こうした考え方を持って、国際社会とも緊密に連携していきたいと考えております。

日韓関係(韓国情勢、大臣訪韓)

【ソウル新聞 ミョン記者】現在、韓国では、政治的な混乱が続いております。この状況が、日韓関係、特に、安全保障や経済協力に、どのような影響を及ぼすとお考えでしょうか。また、日本政府として、どのような対応を検討されていますか。また、13日、韓国を訪れ、韓国の外務長官との会談が予定されているのですが、現在の調節状況や具体的な議題について、お考えを聞かせてください。

【岩屋外務大臣】まず、韓国の現状につきましては、一連の様々な動きにつきましては、日本政府としては、特段かつ極めて重大な関心を持って、注視しているところでございます。
 その上で、日韓関係は、極めて重要な、大切な二国間関係だと考えておりまして、この考えに変わりは一切ございません。韓国は、国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国でございます。特に、現下の、戦略環境の下においては、日韓関係の重要性は、より高まっていると考えております。
 先月の、私(岩屋大臣)と趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官との電話会談の機会も含めまして、今、両政府間では、情勢が複雑化する中にあっても、日韓、そして、日韓米の3か国が、緊密な連携を確保し続けることの重要性を確認してきているところでございます。
 訪韓については、まだ詳細まで決まっておりませんが、実現すれば、外相間を含め、両政府間で緊密な意思疎通を行ってまいりたいと考えております。

日中関係

China Daily 江記者】
(以下は英語にて発言)
 岩屋さん、新年における日中間の経済活動や人的交流を促進するための具体的な計画は何でしょうか。

【岩屋外務大臣】昨年末、北京を訪問いたしまして、王毅(おう・き)外交部長との間で、外相会談を行いました。また、日中両首脳間で確認したとおり、戦略的な互恵関係を包括的に推進していくと、そして、建設的かつ安定的な日中関係を構築するという大きな方向性のもとに、王毅外交部長と、3時間にわたってお話をしてまいりました。それを受けて、今年もハイレベルの意思疎通、また、往来の機会というものを設けていかなければいけないと思っております。
 そのような観点から、本年の最も早い適切な時期に、王毅部長の訪日を実現したいと考えております。そして、その際には、ハイレベルの経済対話を開催しようということで一致をしておりまして、今後、具体的な調整を進めていきたいと考えております。
 中国は、日本にとって最大の貿易相手国でもあるんですね。日本企業が、約1万3,000社進出しておりますし、在留する邦人は、10万2,000人近くに及んでおります。全部が経済人ということではないと思いますけれども、こうした民間企業の経済活動を後押ししていく。それから、当然、日本全体の国益に資するように、対話と実務協力を通じて、中国との経済関係を適切な形で進めていきたいとそう考えております。
 それから、先般伺ったときに、何よりも国民同士の交流が基盤になりますよねと、そして、お互いの世論調査の結果を見ると、現在では残念なことに、9割近い方々が、お互いを好ましく思っていないという残念な結果になっておりますので、やはりまず、国民同士の交流を活発にして、相互理解を深めていくということが大事だということで一致をしております。
 先般の訪中の際にも、日中ハイレベル人的・文化対話を実施したところでございまして、引き続き、日中両国の国民間の相互理解の促進のために、双方で努力していきたいというふうに考えているところでございます。

サイバー戦争における先制攻撃

【フィナンシャルタイムズ ルイス記者】あけましておめでとうございます。大臣は、日本がサイバー戦争における「先制攻撃」能力を保有すべきであるとお考えですか。もしそうなら、それを、それを可能にするために、どのような法改正が必要でしょうか。ありがとうございます。

【岩屋外務大臣】サイバー空間は、厳しい安全保障環境の中にあっても、地政学的緊張を反映した国家間の競争の場になっております。したがって、我が国のサイバー対応能力を高める、向上させるということは、喫緊の課題になっております。
 この点、国家安全保障戦略では、どう言っているかといいますと、「サイバー安全保障分野での対応能力を欧米の主要国と同等以上に向上させる」ということを目標に掲げた上で、「武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃の畏れがある場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大を防止するために、能動的サイバー防御を導入する」とされているところでございます。
 この能動的サイバー防御の実現に向けた法制度の整備につきましては、有識者会議から頂いた提言を踏まえまして、可能な限り早期に法案としてお示しできるように、今、内閣官房を中心に、政府全体で検討を加速させているところでございます。
 なお、御指摘の「先制攻撃」につきまして、一般論として申し上げますと、我が国の取組は、憲法及び国際法の範囲内で行われるものでございますので、特に、国連憲章の下での自衛権の行使にあたりましては、武力攻撃が発生していない段階で、自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないというのが、我が国の基本的な、これまでの立場でございます。これに変わりはございません。

日韓関係(日韓国交正常化60周年)

【東亜日報 ソン記者】今、大統領に対する拘束令状執行の問題とか、今、不安定な韓国の状況について、どうお考えでいるか、ちょっと伺いたいと思います。そして、こういう状況が、ちょっと長くなる可能性もありますが、今年、国交正常化60周年に関して、日本側では、具体的に、どのような準備しているかも伺いたいと思います。

【岩屋外務大臣】現在の韓国における様々な動静につきましては、これは、内政上の事でございますので、我が国からコメントすることは控えたいと思います。
 先ほども申し上げたように、重大な関心をもって注視しておりまして、私(岩屋大臣)個人としては、韓国の民主主義の強靭性というものを信じております。
 今、お尋ねの日韓国交正常化60周年、これについては、両国国民や両国の未来にとって、極めて重要であるという観点から、今、準備を進めていくということについて、日韓間で確認してきております。先日は、ロゴマークや、認定事業募集などの発表も行ったところでございまして、できるだけ、予定に沿って、しっかりと日韓国交正常化60周年の記念事業を進めてまいりたいと考えております。

対ウクライナ支援

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】明けましておめでとうございます。ウクライナ、ロシアとの外交方針について伺います。昨年12月31日、英国フィナンシャル・タイムズが、「2013年から2014年にかけて、ロシア軍は日本や韓国との潜在的な戦争に備え、原子力発電所その他160か所の標的リストを準備してきた」と報じました。原発を狙われれば、日本のミサイル防衛システムで、原発を守ることは不可能です。日本は、いつまでも「ウクライナとともにある」などと言いつつ、ウクライナに対して、既に1兆数千億円もの支援を行い、ロシアから不必要に敵対視され、絶対に戦争してはならない隣国ロシアをいたずらに挑発し続けています。また、安倍政権以降の対露外交により、日露関係は悪化の一途をたどっており、ウクライナ紛争の勝敗は、もはや明らかであるため、国民の血税によるこれ以上の支援はやめるべきだと考えます。日本は、これまでの対ウクライナ、対ロシア外交を改め、中立的で、仲裁的な外交に切り替えるべき時であると思いますが、岩屋大臣のご見解をお願いします。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】まず、今、御指摘にあった報道については承知しておりますが、その個々の報道の中身について、コメントすることは控えたいと思います。
 いずれにしても、政府としては、ロシア軍の動向については、引き続き、高い関心を持って注視していきたいと思います。
 その上で、今のお尋ねですけれども、ロシアによるウクライナ侵略は、まさに国際法の重大な違反であって、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だと言わざるを得ないと考えております。
 私(岩屋大臣)も、現地に行って思いましたけれども、やはり、このような力による一方的な現状変更というのは、どこであっても起こってはならないという思いを非常に強くして戻ってまいりました。その考え方、また問題意識のもとに、これまで一貫して、我が国は、ウクライナの支援を行ってきておりますし、対露制裁を実施してきているところでございます。したがって、「ロシアをいたずらに挑発している」という御指摘は当たらないと考えております。
 もちろん、できるだけ一刻も早く、こういう状況が終わることが大切だと思っておりまして、もちろん、それは、まず、ウクライナの人々の意思によるものでなければならないと思っておりますが、我が国としては、一日も早くウクライナにおける、公正かつ永続的な平和を実現するために、引き続き、国際社会と緊密に連携していく考えでございます。
 冒頭申し上げたように、今年は様々な混乱、紛争、戦争といったものを、沈静化させ、また停止をさせ、国際秩序を安定化させまた再構築していく年にしていかなければならない、していきたいと考えておりますので、そういう考え方に基づいて、引き続き、ウクライナの問題にも対処してまいりたいと考えております。

日韓関係(日韓国交正常化60周年)

【毎日新聞 金記者】先ほども日韓国交正常化60周年について質問が出ましたけれども、改めてお伺いさせていただきたいと思います。1965年の日韓国交正常化以来、日韓両国においては、様々な幅広い分野で、交流・協力関係、構築が進んできたと思いますけれども、改めて、本年国交正常化60周年を迎える意義について、大臣、どのようにお考えか、また、今後、この両国関係、どのように発展させていきたいかというお考えについてお聞かせください。

【岩屋外務大臣】今年は60周年ということですけれども、この間には、様々なことがあったと思うんですね。日韓関係は、いつも良好であったというわけではなかったと思います。しかし、岸田前政権において、日韓関係は大きく改善をし、また前進をし始めました。この流れを、ぜひ堅持・維持させていただいて、発展をさせていきたいと考えております。
 なぜならば、やはり、アジアという地域において、日本と韓国は、基本的な価値や原則というものが共有できていると思います。韓国経済も、この間、目覚ましく発展を遂げてきておりますし、一部の報道によれば、1人当たりのGDPは、既に日本を抜いたというような報道もございます。
 お互いが学ぶべきことがたくさんあるというのが、日韓の関係だと思いますので、もちろん、課題もたくさんありますが、これは、粘り強い対話・努力によって、そういう問題を、一つずつ解決していく、減らしていく。そして、一緒に協力できる分野を増やしていく。それが、日韓両国のみならず、地域のためになり、また世界のためになる。こういう考え方に基づいて、この60周年というものを迎えなければいけないと考えておるところでございます。

ブリンケン米国務長官の訪日

【共同通信 阪口記者】冒頭御発言ありました、ブリンケン米国務長官との会談についてお尋ねします。中身というか、今回ブリンケン米国務長官就任して以来、初めての訪問が日本でした。今回、政権の最終盤になって、日本に訪問されて、日本を重視しているという姿勢を見せられたかと思うんですけれども、この訪問の意義について、訪問してもらったというか、訪問して会談が行われたという、この意義については、どのように捉えてらっしゃるのか、国際協調が必要な課題が山積する中で、このような会談を持てたことの意義について、ちょっとお尋ねできればと思います。

【岩屋外務大臣】今ご指摘があったように、ブリンケン米国務長官最初の訪問先が日本で、最後の、といいますか、まだブリンケン長官の外遊は続くようですけれども、また日本にお越しいただいた。これは、まさに、日米関係を重視していることの表れだと思いますし、このことを評価し、歓迎したいと思っております。
 もうすぐ、米国では、新政権が発足するわけですけれども、是非、この間、非常に今までにない高みに達した日米同盟、日米関係というものを、次期政権にも受け継いでいってもらいたい。
 また、私(岩屋大臣)どもとしては、次期政権との間でも継続をし、これを更に発展をさせていきたいと思っておりますので、ブリンケン国務長官が、4年の、この長い、国務長官としての任期の最後に、また日本に寄ってきていただいて、そのことを確認をさせていただいたということは、大変意義のあることだったと思います。
 そのことが、今後しっかりと生かされていくように、私達も最大限の努力を行っていきたいと思っております。

冒頭発言

新年の抱負

【岩屋外務大臣】まず、謹んで新年のお慶びを申し上げたいと思います。昨年も大変お世話になりました。本年も、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 令和7年、最初の記者会見でございますので、私(岩屋大臣)から、抱負を、冒頭申し述べさせていただきたいと思います。
 本年の干支は、乙巳(きのとみ)でございます。困難があっても、紆余曲折を経て前に進んでいく、努力によって物事を安定させていく、そういう意味があるそうでございます。今年も、国際情勢の激動が予想されますが、だからこそ、「対話と協調の外交」によって、世界を分断から協調に導き、我が国と地域の平和を守り抜いていく、その決意で外交を進めてまいりたいと思います。
 先刻、米国のブリンケン米国務長官と会談を行いました。ブリンケン長官との間で、地域情勢や安全保障、経済、同志国連携といった幅広い分野にわたりまして意見交換を行い、かつてなく強固になった日米関係を、今後とも維持・強化していくことの重要性を確認したところでございます。
ブリンケン米国務長官の、この4年間に及ぶ日米同盟強化のための御尽力、あるいは、国際情勢に対する果断な対応に対して、心から敬意を表したいと、感謝申し上げたいと思います。
 今月には、米国で第二期トランプ政権が発足いたします。トランプ次期政権との間でも、率直に議論を行いまして、強固な信頼関係・協力関係を構築していきたいと考えております。日米同盟は、我が国の外交・安全保障政策の基軸でございます。これを、更なる高みに引き上げていく努力を行っていきたいと考えております。
 そして、ウクライナでは、ロシアによる侵略が継続しております。昨日の北朝鮮による弾道ミサイル発射を含めまして、我が国を取り巻く安全保障環境も一層厳しさを増しております。日米同盟を基軸に、同盟国・同志国との連携を進め、「自由で開かれたインド太平洋」のビジョンの下に、「法の支配」に基づく国際秩序の堅持に向けて、あるいは再構築に向けて、しっかりと役割を果たしていきたいと思います。
 また、本年は、国連が創設80周年を迎えます。国際社会の分断を防ぎ、協調を促していくために、「グローバル・サウス」との連携も、引き続き、重視してまいります。本年8月に、横浜で開催予定の第9回アフリカ開発会議(TICAD9)など、様々な機会を通じまして、きめ細かな対話を進めてまいりたいと思います。
 私(岩屋大臣)は、今年の書き初めで、「雲外蒼天」という言葉を書かせていただきました。雲の外には、蒼い空が広がっている。困難を乗り越えた先には、明るい未来が待っている。このことを固く信じて、本年1年、外交に取り組んでまいりたいと思います。皆様の一層のご指導ご鞭撻を、よろしくお願い申し上げます。
 冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。

日本製鉄によるUSスチール買収

【日経新聞 馬場記者】冒頭でも発言ありましたけれども、ブリンケン米国務長官との会談についてお伺いします。日本製鉄によるUSスチールの買収について、岩屋大臣から、今回の会談でも話題を提起されたかと思います。日米相互の投資というのは、本来、相互の経済にとってプラスの話であって、経済関係の強化を日米は進めてきたはずですが、そうした中での今回のバイデン大統領の買収禁止の決定を受けて、大臣からブリンケン長官に、どのような対応を求められて、また、長官の方から、どういったご説明があったのでしょうか。この話題に、どのくらい時間を割かれて議論されたのかも含めて、可能な範囲でお伺いします。

【岩屋外務大臣】冒頭申し上げたように、今日の日米外相会談は、極めて多岐にわたるテーマについて、議論、そして意見交換を行いました。
今、お尋ねになったUSスチールの件は、その中の一つでございますが、この局面において、これについては触れざるを得ないという考えで、私(岩屋大臣)から問題提起をさせていただいたところでございます。
 ブリンケン米国務長官との間では、経済分野についても、このUSスチールの問題に限らず、意見交換を行いまして、日本企業による対米投資を含む、日米関係の重要性については、改めて確認をしたところでございます。
 私(岩屋大臣)からは、日本製鉄によるUSスチール買収をめぐっては、日本から米国への投資は、両国にとって利益のあることだと、当方は考えているだけに、USスチールの労働者側からも本件を支持する声が上がっていた中で、今回、国家安全保障上の懸念を理由として、買収を禁止する判断がなされたことは、極めて残念であるということを申し上げました。
 また、日米双方の経済界、とりわけ日本の産業界からは、今後の日米間の投資について、強い懸念の声、心配の声が上がっておりまして、これは、我々としても、重く受け止めざるを得ないと思っております。
 こうした観点から、今回の会談におきましても、こういった懸念の払拭に向けた対応を、米国側に求めたところでございます。それ以上の詳細については、外交上のやり取りでもありますので、お答えをお控えさせていただきたいと思います。

トルドー加首相の辞意表明、G7の結束

【読売新聞 植村記者】あけましておめでとうございます。カナダのトルドー首相が、辞意を表明されました。G7で最も在任期間が長いトルドー氏の功績、これまでの功績をどのように考えて、今回の辞任について、どのように受け止めているか伺います。また、G7の首脳をめぐっては、ここ1年で、数人が交代をするなど、そういう状況が起きていますが、結束を弱めないために、どのような取組が必要だと考えていますでしょうか、よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】今お話のあった、カナダのトルドー首相の進退に係る発表は、承知しておりますが、他国の内政に関わることでございますので、コメントをすることは控えたいと思います。
 日本とカナダは、インド太平洋地域の重要な戦略的パートナーでございます。 G7のメンバーとして、政治、経済、安全保障、人的交流など、幅広い分野で密接に協力しております。この間、そのG7のメンバー国のリーダーとして、御尽力をいただいてきたトルドー首相には、心から敬意を表したいと思っております。
 G7は、価値や原則を共有する同志国の集まりでございます。国際社会が、様々な課題・問題に直面している中で、このG7の結束というのは、これからも大変重要だと思っております。「法の支配」が貫徹した国際秩序を維持していくという意味で、やはり、G7の結束・協力というのは、非常に重要だと思っておりますので、今後とも、本年は、カナダが議長国ということでございますので、各国のリーダーとしっかり意思疎通を行って、G7の一層の連携強化に向けて、我が国としても、尽力していきたいと考えております。

核兵器廃絶に向けた取組

【NHK 広内記者】核なき世界の実現について伺いたいと思います。日本政府は、かねてから、NPT体制を重視する立場ですけれども、ノーベル平和賞を受賞した被団協や、連立を組む公明党からは、核兵器禁止条約へのオブザーバー参加を求める声が高まっています。石破総理も検証する考えを示していますけれども、この戦後80年となる今年、日本政府として、どういうアプローチで核廃絶に取り組む考えなのか、特に、2大保有国である米国のトランプ次期大統領や、ロシアのプーチン大統領に、どう働きかけていく考えなんでしょうか。

【岩屋外務大臣】まず、被団協さんの「ノーベル平和賞受賞」については、改めて、長きにわたる御取組に、心から敬意を表し、また、祝意を申し上げさせていただきたいと思います。
 我が国は、戦後一貫して、平和国家として歩んでまいりましたし、唯一の被爆国として、最終的に「核兵器のない世界」を実現していくということが、我が国の使命あると考えております。
 一方で、御案内のとおり、我が国周辺では、核・ミサイル戦力を含む軍備増強が、誠に残念で遺憾なことに、急速に進展しているという状況にございます。その意味で、我が国は、戦後最も厳しい安全保障環境の中にあると申し上げても過言ではないと思っております。
 したがいまして、政府としては、抑止力を維持・強化しつつ、この安全保障上の脅威に、適切に対処していくという前提に立って、核兵器国、また、非核兵器国が幅広く参加する唯一の枠組みであるNPT体制というものを、大切に考えてまいりました。今後とも、米国次期政権とも緊密に連携しながら、核軍縮、あるいは核兵器のない世界に向けた、現実的で実践的な取組を行っていきたいと考えております。
 御指摘の、核兵器禁止条約につきましても、今申し上げた考え方の下で、いかなる対応が適切かということを、現在、予断なく検証しているところでございます。今後とも検証を続けて、しかるべき時期に判断していきたいと思っております。
 また、ロシアにつきましては、ロシアがウクライナ侵略の文脈において、核兵器の使用を示唆するような言動を繰り返していると、これは極めて憂慮すべきことであり、遺憾に考えております。ロシアによる核の威嚇、ましてや、使用は、断じてあってはなりません。今後とも、ロシアへの働きかけを含めて、あらゆる機会を捉えて、外交努力を払ってまいりたいと考えております。

在日米軍の綱紀粛正

【琉球新報 明(あきら)記者】米兵による、事件の再発防止について伺います。昨年11月に、沖縄県内で、学校法人のドアを壊したとして、建造物損壊などの容疑で書類送検された米海兵隊上等兵が、12月にも、別の器物損壊事件で逮捕されていたことが分かりました。同一人物が、2か月間で2度も摘発されたことについて、「リバティ制度」の実効性がどう影響しているか、大臣の見解を教えてください。また、従来の対策では、米兵の綱紀粛正につながっていないと思われますが、更に強い対策を求める考えはありますでしょうか。

【岩屋外務大臣】まず、御指摘のように、同一人物が、2か月間で2度も摘発されたということについては、誠に遺憾に思っております。あってはならないことだと思っております。
 重要なことは、見直しされた「リバティ制度」を含む、米軍が発表した一連の再発防止策、これが、実際に、事件・事故の防止につながるということでございまして、これまでも、私(岩屋大臣)からも、在日米軍司令官等に対して、この綱紀粛正、また、その対策の遵守といいますか、しっかりと履行してもらうように働きかけてまいりましたが、引き続き、強く申し入れていきたいと思っております。
今般の事案の発生を受け、米側には、既に遺憾の意を伝えるとともに、綱紀粛正と再発防止を申し入れておりますが、引き続き、様々な機会を捉えて、私(岩屋大臣)からも、申入れを行っていきたいと考えております。

シリア情勢

【パンオリエントニュース アズハリ記者】
(以下は英語にて発言)
最近のシリア情勢に関し、早期に対シリア制裁を解除する予定はありますか。また、日本はシリアに対してどのような制裁を行ってきましたか。また、現地大使館のレベルを大使級に引き上げ、欧州の外相らによるシリア訪問のような、要人訪問の予定はありますか。ありがとうございます。

【岩屋外務大臣】シリアにおける、一連の事態の推移を、私どもも、重大な関心を持って注視しております。
 我が国は、これまで、どういうことをやってきたかということですが、安保理テロ制裁委員会の指定を受けて、シャーム解放機構を含む団体や個人を、外為法等に基づく資産凍結等の措置の対象に指定してまいりました。
 また、シリアのアサド政権関係者等に対しましても、外為法に基づく措置を実施してきております。
 この制裁については、安保理テロ制裁委員会を含む国際社会のこれからの議論も注視しながら、適切に判断してまいりたいと思います。
 私どもとしては、シリアの、何よりも国民の皆さんにとって、より良き状態が創り出されることを望んでおりまして、その動向を見ていきながら、適切に、我が国としても、この制裁についても、判断してまいりたい。つまり、解除をするということも含めて、適切に判断してまいりたいと考えております。
 日本政府としても、これまで、いわゆる今の暫定政権、暫定政権の関係者と接触してきておりますが、その対応ぶりについて、今後の対応ぶりについては、予断をもって申し上げることは控えたいと思いますが、全ての関係者が、シリア国民による、対話を通じた、包摂的な政治的解決に向けて、建設的な役割を果たすということを期待しておりますし、シリアにおいて、平和的で安定した政権移行が行われることを期待しております。こうした考え方を持って、国際社会とも緊密に連携していきたいと考えております。

日韓関係(韓国情勢、大臣訪韓)

【ソウル新聞 ミョン記者】現在、韓国では、政治的な混乱が続いております。この状況が、日韓関係、特に、安全保障や経済協力に、どのような影響を及ぼすとお考えでしょうか。また、日本政府として、どのような対応を検討されていますか。また、13日、韓国を訪れ、韓国の外務長官との会談が予定されているのですが、現在の調節状況や具体的な議題について、お考えを聞かせてください。

【岩屋外務大臣】まず、韓国の現状につきましては、一連の様々な動きにつきましては、日本政府としては、特段かつ極めて重大な関心を持って、注視しているところでございます。
 その上で、日韓関係は、極めて重要な、大切な二国間関係だと考えておりまして、この考えに変わりは一切ございません。韓国は、国際社会の様々な課題にパートナーとして協力すべき重要な隣国でございます。特に、現下の、戦略環境の下においては、日韓関係の重要性は、より高まっていると考えております。
 先月の、私(岩屋大臣)と趙兌烈(チョ・テヨル)外交部長官との電話会談の機会も含めまして、今、両政府間では、情勢が複雑化する中にあっても、日韓、そして、日韓米の3か国が、緊密な連携を確保し続けることの重要性を確認してきているところでございます。
 訪韓については、まだ詳細まで決まっておりませんが、実現すれば、外相間を含め、両政府間で緊密な意思疎通を行ってまいりたいと考えております。

日中関係

China Daily 江記者】
(以下は英語にて発言)
 岩屋さん、新年における日中間の経済活動や人的交流を促進するための具体的な計画は何でしょうか。

【岩屋外務大臣】昨年末、北京を訪問いたしまして、王毅(おう・き)外交部長との間で、外相会談を行いました。また、日中両首脳間で確認したとおり、戦略的な互恵関係を包括的に推進していくと、そして、建設的かつ安定的な日中関係を構築するという大きな方向性のもとに、王毅外交部長と、3時間にわたってお話をしてまいりました。それを受けて、今年もハイレベルの意思疎通、また、往来の機会というものを設けていかなければいけないと思っております。
 そのような観点から、本年の最も早い適切な時期に、王毅部長の訪日を実現したいと考えております。そして、その際には、ハイレベルの経済対話を開催しようということで一致をしておりまして、今後、具体的な調整を進めていきたいと考えております。
 中国は、日本にとって最大の貿易相手国でもあるんですね。日本企業が、約1万3,000社進出しておりますし、在留する邦人は、10万2,000人近くに及んでおります。全部が経済人ということではないと思いますけれども、こうした民間企業の経済活動を後押ししていく。それから、当然、日本全体の国益に資するように、対話と実務協力を通じて、中国との経済関係を適切な形で進めていきたいとそう考えております。
 それから、先般伺ったときに、何よりも国民同士の交流が基盤になりますよねと、そして、お互いの世論調査の結果を見ると、現在では残念なことに、9割近い方々が、お互いを好ましく思っていないという残念な結果になっておりますので、やはりまず、国民同士の交流を活発にして、相互理解を深めていくということが大事だということで一致をしております。
 先般の訪中の際にも、日中ハイレベル人的・文化対話を実施したところでございまして、引き続き、日中両国の国民間の相互理解の促進のために、双方で努力していきたいというふうに考えているところでございます。

サイバー戦争における先制攻撃

【フィナンシャルタイムズ ルイス記者】あけましておめでとうございます。大臣は、日本がサイバー戦争における「先制攻撃」能力を保有すべきであるとお考えですか。もしそうなら、それを、それを可能にするために、どのような法改正が必要でしょうか。ありがとうございます。

【岩屋外務大臣】サイバー空間は、厳しい安全保障環境の中にあっても、地政学的緊張を反映した国家間の競争の場になっております。したがって、我が国のサイバー対応能力を高める、向上させるということは、喫緊の課題になっております。
 この点、国家安全保障戦略では、どう言っているかといいますと、「サイバー安全保障分野での対応能力を欧米の主要国と同等以上に向上させる」ということを目標に掲げた上で、「武力攻撃に至らないものの、国、重要インフラ等に対する安全保障上の懸念を生じさせる重大なサイバー攻撃の畏れがある場合、これを未然に排除し、また、このようなサイバー攻撃が発生した場合の被害の拡大を防止するために、能動的サイバー防御を導入する」とされているところでございます。
 この能動的サイバー防御の実現に向けた法制度の整備につきましては、有識者会議から頂いた提言を踏まえまして、可能な限り早期に法案としてお示しできるように、今、内閣官房を中心に、政府全体で検討を加速させているところでございます。
 なお、御指摘の「先制攻撃」につきまして、一般論として申し上げますと、我が国の取組は、憲法及び国際法の範囲内で行われるものでございますので、特に、国連憲章の下での自衛権の行使にあたりましては、武力攻撃が発生していない段階で、自ら先に攻撃する先制攻撃は許されないというのが、我が国の基本的な、これまでの立場でございます。これに変わりはございません。

日韓関係(日韓国交正常化60周年)

【東亜日報 ソン記者】今、大統領に対する拘束令状執行の問題とか、今、不安定な韓国の状況について、どうお考えでいるか、ちょっと伺いたいと思います。そして、こういう状況が、ちょっと長くなる可能性もありますが、今年、国交正常化60周年に関して、日本側では、具体的に、どのような準備しているかも伺いたいと思います。

【岩屋外務大臣】現在の韓国における様々な動静につきましては、これは、内政上の事でございますので、我が国からコメントすることは控えたいと思います。
 先ほども申し上げたように、重大な関心をもって注視しておりまして、私(岩屋大臣)個人としては、韓国の民主主義の強靭性というものを信じております。
 今、お尋ねの日韓国交正常化60周年、これについては、両国国民や両国の未来にとって、極めて重要であるという観点から、今、準備を進めていくということについて、日韓間で確認してきております。先日は、ロゴマークや、認定事業募集などの発表も行ったところでございまして、できるだけ、予定に沿って、しっかりと日韓国交正常化60周年の記念事業を進めてまいりたいと考えております。

対ウクライナ支援

【インディペンデント・ウェブ・ジャーナル 濱本記者】明けましておめでとうございます。ウクライナ、ロシアとの外交方針について伺います。昨年12月31日、英国フィナンシャル・タイムズが、「2013年から2014年にかけて、ロシア軍は日本や韓国との潜在的な戦争に備え、原子力発電所その他160か所の標的リストを準備してきた」と報じました。原発を狙われれば、日本のミサイル防衛システムで、原発を守ることは不可能です。日本は、いつまでも「ウクライナとともにある」などと言いつつ、ウクライナに対して、既に1兆数千億円もの支援を行い、ロシアから不必要に敵対視され、絶対に戦争してはならない隣国ロシアをいたずらに挑発し続けています。また、安倍政権以降の対露外交により、日露関係は悪化の一途をたどっており、ウクライナ紛争の勝敗は、もはや明らかであるため、国民の血税によるこれ以上の支援はやめるべきだと考えます。日本は、これまでの対ウクライナ、対ロシア外交を改め、中立的で、仲裁的な外交に切り替えるべき時であると思いますが、岩屋大臣のご見解をお願いします。よろしくお願いします。

【岩屋外務大臣】まず、今、御指摘にあった報道については承知しておりますが、その個々の報道の中身について、コメントすることは控えたいと思います。
 いずれにしても、政府としては、ロシア軍の動向については、引き続き、高い関心を持って注視していきたいと思います。
 その上で、今のお尋ねですけれども、ロシアによるウクライナ侵略は、まさに国際法の重大な違反であって、国際秩序の根幹を揺るがす暴挙だと言わざるを得ないと考えております。
 私(岩屋大臣)も、現地に行って思いましたけれども、やはり、このような力による一方的な現状変更というのは、どこであっても起こってはならないという思いを非常に強くして戻ってまいりました。その考え方、また問題意識のもとに、これまで一貫して、我が国は、ウクライナの支援を行ってきておりますし、対露制裁を実施してきているところでございます。したがって、「ロシアをいたずらに挑発している」という御指摘は当たらないと考えております。
 もちろん、できるだけ一刻も早く、こういう状況が終わることが大切だと思っておりまして、もちろん、それは、まず、ウクライナの人々の意思によるものでなければならないと思っておりますが、我が国としては、一日も早くウクライナにおける、公正かつ永続的な平和を実現するために、引き続き、国際社会と緊密に連携していく考えでございます。
 冒頭申し上げたように、今年は様々な混乱、紛争、戦争といったものを、沈静化させ、また停止をさせ、国際秩序を安定化させまた再構築していく年にしていかなければならない、していきたいと考えておりますので、そういう考え方に基づいて、引き続き、ウクライナの問題にも対処してまいりたいと考えております。

日韓関係(日韓国交正常化60周年)

【毎日新聞 金記者】先ほども日韓国交正常化60周年について質問が出ましたけれども、改めてお伺いさせていただきたいと思います。1965年の日韓国交正常化以来、日韓両国においては、様々な幅広い分野で、交流・協力関係、構築が進んできたと思いますけれども、改めて、本年国交正常化60周年を迎える意義について、大臣、どのようにお考えか、また、今後、この両国関係、どのように発展させていきたいかというお考えについてお聞かせください。

【岩屋外務大臣】今年は60周年ということですけれども、この間には、様々なことがあったと思うんですね。日韓関係は、いつも良好であったというわけではなかったと思います。しかし、岸田前政権において、日韓関係は大きく改善をし、また前進をし始めました。この流れを、ぜひ堅持・維持させていただいて、発展をさせていきたいと考えております。
 なぜならば、やはり、アジアという地域において、日本と韓国は、基本的な価値や原則というものが共有できていると思います。韓国経済も、この間、目覚ましく発展を遂げてきておりますし、一部の報道によれば、1人当たりのGDPは、既に日本を抜いたというような報道もございます。
 お互いが学ぶべきことがたくさんあるというのが、日韓の関係だと思いますので、もちろん、課題もたくさんありますが、これは、粘り強い対話・努力によって、そういう問題を、一つずつ解決していく、減らしていく。そして、一緒に協力できる分野を増やしていく。それが、日韓両国のみならず、地域のためになり、また世界のためになる。こういう考え方に基づいて、この60周年というものを迎えなければいけないと考えておるところでございます。

ブリンケン米国務長官の訪日

【共同通信 阪口記者】冒頭御発言ありました、ブリンケン米国務長官との会談についてお尋ねします。中身というか、今回ブリンケン米国務長官就任して以来、初めての訪問が日本でした。今回、政権の最終盤になって、日本に訪問されて、日本を重視しているという姿勢を見せられたかと思うんですけれども、この訪問の意義について、訪問してもらったというか、訪問して会談が行われたという、この意義については、どのように捉えてらっしゃるのか、国際協調が必要な課題が山積する中で、このような会談を持てたことの意義について、ちょっとお尋ねできればと思います。

【岩屋外務大臣】今ご指摘があったように、ブリンケン米国務長官最初の訪問先が日本で、最後の、といいますか、まだブリンケン長官の外遊は続くようですけれども、また日本にお越しいただいた。これは、まさに、日米関係を重視していることの表れだと思いますし、このことを評価し、歓迎したいと思っております。
 もうすぐ、米国では、新政権が発足するわけですけれども、是非、この間、非常に今までにない高みに達した日米同盟、日米関係というものを、次期政権にも受け継いでいってもらいたい。
 また、私(岩屋大臣)どもとしては、次期政権との間でも継続をし、これを更に発展をさせていきたいと思っておりますので、ブリンケン国務長官が、4年の、この長い、国務長官としての任期の最後に、また日本に寄ってきていただいて、そのことを確認をさせていただいたということは、大変意義のあることだったと思います。
 そのことが、今後しっかりと生かされていくように、私達も最大限の努力を行っていきたいと思っております。

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