舟山康江参議院議員会長(参議院議員/山形県)は4日、参議院本会議において、石破総理大臣の所信表明演説に対する代表質問を行った。全文は以下の通り。
令和6年12月4日
石破内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問
国民民主党・新緑風会 舟山康江
1. はじめに
国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表して、石破総理の所信表明演説に対して質問を致します。
先の衆議院総選挙は、どの政党も過半数に届かない結果となり、表面的には自公政権が継続したものの、衆議院では過半数に満たない「少数与党政権」に転じました。
今後は、政府・与党の事前調整で決めたことを野党に追認させるという政策決定は通じません。与野党の熟議を通して、より広い民意を反映する政策決定への変更を国民が支持した結果です。まさに石破総理が所信表明演説で石橋湛山元総理の演説を引用し強調したとおりですが、逆に言えば、これまでの政権は、他党の意見を丁寧に聞くこと、可能な限りの幅広い合意形成など、当たり前の過程を怠ってきたことを物語っています。従来の政権の反省点を含めて、今後の政治のあるべき姿に向けた総理の決意をまずお聞きします。
与党過半数割れの原因の1 つは、石破総理の政治姿勢が変節したとの疑念を、多くの国
民が抱いた点です。総裁選時、勝利目当てに心にもないことを語っていたとは思いません。むしろ本音を訴え、本気で実現しようと意気込んでおられたものの、自民党という組織はそう甘くはなかった。総理といえども自民党の中で舵取りするには、様々な意見に配慮せざるを得ず、敢えて持論を封印し、そのチャンスをうかがっているのですよね?総裁選での主張を後退させてないことを明言して下さい。
例えば、「駐留に伴う諸問題の解決にも取り組む」とは、日米地位協定の改定も視野に入れているのか、お答え下さい。
総理、安心して下さい。まさに与党だけでは何も進まない状況の今、野党の力を上手く活かして下さい。多くの野党、そして国民民主党は、日米地位協定改定や、金融所得課税強化、政策活動費廃止を含む政治改革、農業の直接支払い拡充など、総理のかねてからの主張に大賛成です。ぜひ一緒に前に進めましょう!
2. 手取りを増やす。
私たち国民民主党は、「手取りを増やす!」政策を前面に掲げて総選挙を戦いました。その具体策の1 つが、基礎控除の拡大、いわゆる「103 万円の壁」の引き上げです。
控除制度は、「生活に必要な最低限の生きるためのコストは非課税」という根本原則に則ったもので、現在の「課税最低限」は、基礎控除48 万円と給与所得控除55 万円を合わせて103 万円です。1995 年までは物価上昇等に合わせて引き上げていましたが、それ以降は放置。この30 年、物価のみならず税金や社会保険料引き上げで「生きるためのコスト」が上がる中、控除額が不変、では明らかに不合理です。
財務省の国際比較の資料では、今年1 月現在の、日本の単身者の課税最低限は、日米英独仏の中で、最も低い金額です。
総理がこれらをご理解頂き、所信表明でも引き上げを明言されたことは率直に評価致しますが、問題は引上げ額です。国民民主党は、最低賃金決定の際の考慮要素として「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」にと明確に示されていることからも、その上昇率に合わせるべきとの観点に立って、178 万円への引き上げを提案していますので、ぜひ総理のリーダーシップで決断頂きたいと思いますが、いかがですか? 税金を集めて使う立場ではなく、税金を納める国民の立場を考えたご答弁をお願いします。
合わせて、「暫定」と言いながら半世紀も続いているガソリン等の暫定税率の廃止については、所信の中で、「自動車関係諸税全体の見直しの中で」ではなく、「見直しに向けて検討」と、踏み込んでいますので、まずは先行して決断頂けるものと確信していますが、その決意をお聞かせ下さい。
3. 人への投資
人づくりこそ国づくり。我が党が結党以来一貫して主張してきたフレーズを、まさに直球で総理が所信で使われたことに敬意を表します。
国民民主党は、人への投資として、年5兆円程度の「教育国債」発行で、子育て予算と教育・科学技術予算を倍増すべきと提案し続けてきました。安易な借金を推奨しているわけではなく、まさに教育や子育ては未来への投資であることから、未来からお金を先にお借りして投資をする、そして、将来、大きく育った人材から投資分を回収するべき、という趣旨です。これこそ人づくりの1丁目1番地と考えますが、総理の見解をお聞かせ下さい。
OECDが9月にまとめた報告書によれば、日本の公財政教育支出の対GDP 比は2.9%
と、35カ国のうち2番目に低い水準です。また、大学や専門学校などの高等教育に対する家計負担割合は、比較できる30カ国の中で3番目の高水準です。改めて、総理が表明した「公教育の再生」とは具体的に何か。総理の問題意識と公的支出増額も含めた解決方向をお聞かせ下さい。
我が国の教育現場での深刻な問題は、授業以外に割かなければならない時間が余りに多い点です。同じくOECDの調査では、教員の労働時間中、授業に充てる時間はわずか30%で平均を大幅に下回ります。実際、現場の先生からは、家庭の問題や心の悩みなど、本来カウンセラーなどの専門家が対応すべき相談も多く、残業を余儀なくされるほか、帰宅後もメールや電話での相談に応じることもあり、気が休まる暇がない、寄り添ってあげたいけどもう限界!との悲鳴が聞こえてきます。専門家の養成や配置、拡充も含めて、学校現場の抜本的な改革が必要と考えますが、総理の問題意識をお聞かせ下さい。
4. 災害復旧事業のあり方
総理は重要政策課題の1つに「防災」を挙げています。
気候変動の影響も相まって、近年、自然災害が多発する中、時宜を得たもので、私も問題意識を共有しますし、能登半島地震など様々な災害からの復旧・復興に、与野党の枠を超えて取り組む必要があります。
そういう中で、まず確認したいのは、「皆さんの陳情が政府を動かした」「自分たちが政府に要望したから激甚指定を受けられた」などの一部の与党議員からの発言です。総理、災害復旧事業は、要望の有無で扱いが変わるのでしょうか?
その上で、激甚に指定されるほどの大規模災害でも、「被災者の生活と生業(なりわい)再建に向けた対策パッケージ」のような手厚い支援策が講じられる場合とそうでない場合に分かれ、被災地での不公平感につながっています。発動基準はあるのでしょうか?今回の総合経済対策でも、「これまでに策定した支援パッケージを踏まえながら、早急かつ柔軟に対応する」との記載があり、ぜひ前向きな対応をお願いします。
5. 鉄路の復旧事業
災害時に利用可能な災害復旧事業は、通常の補助事業よりも高い補助率が適用されます。中でも、例えば、河川、道路、港湾、下水道、公園などの公共土木施設ほか、公立学校、公営住宅、児童福祉施設、老人福祉施設など、及び農地や農業用施設については、通常の災害復旧事業でも国庫補助と地方交付税措置により実質的な地元負担は1.5%から2%程度、激甚災害に指定されると0.6%から0.8%に軽減されます。
その理由は、「公共性が高い」からです。では、「鉄道」はどうでしょうか?鉄道は「公共交通」と呼ばれ、まさに公共性が高い施設です。にもかかわらず、災害時でも高率の補助が受けられません。なぜですか?民間事業者だから、というのがお決まりの答えですが、公共性が高い鉄道の復旧も、公共土木施設等と同様の支援を行うべきではないでしょうか?政界きっての鉄道好きの石破総理の見解をお聞かせ下さい。
加えて、そもそも公共交通は採算だけで論じるべきではありません。
参議院の「国民生活・経済及び地方に関する調査会」は、本年、中間とりまとめの中で「社会資本としての地域公共交通を維持していくため、国が積極的に役割を果たしていくことが求められる」とし、道路と比較して予算配分が極めて少ないことも合わせて指摘しました。これは、与野党超えた共通認識で問題提起したもので、「公共交通は公共サービスであるから公共がしっかり責任を持ってサービスを提供していくもの」であり、「目指すものは収益の最大化ではなく・・社会全体の利益を最大化すること」との参考人意見と合わせて、総理にも重く受け止めて頂きたいと思います。
現在の公共交通施策は、国の役割をあくまで「民間や地域の取組への『支援』」にとどめています。支援ではなく国が主体的に役割を果たす方向に転換するべきではないですか?
通常の支援が極めて少ない中、平時の維持でさえ大変な過疎地における赤字路線は、ひとたび被災すればたちまち立ち行かなくなるのは当然です。改めて、鉄道を含む公共交通に関する予算を大胆に増額するべきではないでしょうか?昨日のご答弁では、「法改正し、予算を大幅拡充した」とありましたが、令和6年度を含めて当初予算はほぼ毎年減少、前年度補正を合わせても今年度は前年度より減っていること、そもそも交付金を除く令和6年度当初予算ベースで、同じく公共事業に分類される道路整備予算の68分の1程度にとどまっているお寒い現状を付言し、総理にお伺いします。
6. 河川改修の必要性
公共交通関係予算ほどでないにせよ、河川整備の予算も道路予算の44%程度と極めて少ない現状です。
「地球温暖化に伴う気候変動の影響により、今後更に大雨や短時間強雨の発生頻度や降水量などが増大することが予測されており、大規模な水災害が発生する懸念が高まります。」これは、国土交通省作成の河川事業概要にある記述です。
豪雨災害の多くを、河川の氾濫がもたらしている現状を鑑みると、河川改修は待ったなしです。令和3年4月改定の「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」でも、気候変動による将来の降雨量の増加などを考慮した基本高水の設定を提言しています。
「計画降雨継続時間での降雨量変化倍率」が全国で増える中でも、とりわけ東北地方で高くなることが予測されています。実際、令和に入ってからはどこかで毎年のように甚大な被害が発生している現状を目の当たりにすると、特に東北での河川改修、基本高水の引き上げは待ったなしです。今年の豪雨を振り返ると、九州では降水量900ミリ超を記録しました。その一方で、東北では400ミリ超で「記録的大雨」と呼ばれ、各地で氾濫が相次ぎ、甚大な被害が生じました。総理、早急に事業に取り組む必要があるのではないでしょうか?
合わせて、多くの河川が土砂の堆積や支障木により、氾濫が起こりやすい状況下にあり、改めて、浚渫等の緊急事業を拡充するべきと考えますが、総理の認識を伺います。
7. 農地の役割
豪雨災害に接する中で、私は改めて農地の役割を再認識しています。
少し古い調査ですが、日本学術会議が2001 年に行った試算では、農地の持つ洪水防止、
すなわち大雨時における貯水能力の貨幣価値は、約3 兆5000 億円にも及びます。逆に言えば、もし農地がなかったら、被害はもっと甚大だったはずです。総理は、このような役割をどのように認識し、どう評価すべきと考えますか?
同じ試算では、他にも河川流況安定機能で約1 兆5000 億円、土砂崩壊防止機能で約5000億円、気候緩和機能や保健休養・やすらぎ機能など、合計8 兆円超の効果があるとされています。食料生産の基盤であると同時に、防災・減災の他、多面的機能を担う農業はまさに、我が国安全保障の根幹の1つです。
一方で、残念ながら現状は、農地もそれを利用する農業者も減少、国内生産の増大も実現できず自給率は下がる一途で、生産基盤の弱体化と農村の疲弊に歯止めがかかっていません。その理由は、『農業では食べていけないから』です。まさに、「手取りを増やす」政策を農業でも進める必要があります。
5月に改正された「食料・農業・農村基本法」では、「合理的な価格の形成」が規定されました。価格転嫁は業種を超えて必要ですが、法律で強制するものではなく、価格は市場で決まります。そもそも、現行基本法では「価格形成は市場に任せ、所得の確保は政策に委ねる」との明確な柱があると認識していますが、総理、この基本理念と矛盾はないのでしょうか?
また、前述の農業の多面的役割は、必ずしも価格に反映されるものではない中、各国ともその役割に注目し、直接支払いの充実により再生産可能な所得の確保に向けた施策を講じています。
石破総理は、今年7月のインタビューでは、「直接所得補償」という表現まで使うなど、農業に対する直接支払いの必要性に言及されています。まさに決断の時です。改めて所得確保に向けた直接支払い制度に対する総理の見解を伺います。
国民民主党は、生産基盤である農地の維持に向けた「食料安全保障基礎支払い」の導入を提案しています。合わせて、複雑化している現在のいわゆる水活、畑ゲタ、多面的機能支払い、環境直払い、中山間直払いなどを再整理し、体系的な直接支払い制度に再構築すべきと考えますが、その必要性について、総理の見解を伺います。加えて、中途半端な見直しに終わった改正基本法を再改正するべきと考えますが、合わせて総理の見解をお聞かせ下さい。
8. 企業版ふるさと納税制度の問題点
私たち国民民主党は、先月20 日に提出した来年度税制改正に関する要望の一つとして、今年度末までの期限を5年間延長する方向で政府・与党が検討を進めている企業版ふるさと納税による地方創生事業について、「企業による寄付によって公平性に疑義が抱かれないように透明性を確保する」ことを求めました。
折しも先月22 日に、福島県国見町の「地域再生計画」の認定を国が取り消す事態に至りました。救急車開発事業の原資として企業版ふるさと納税を利用して集められた寄付が、救急車の製造の受注を通じて、寄付元の企業に環流されていた事案であり、入札を装いながら実質は受注先企業以外の参入が困難な条件が付されていたことが問題視されました。
寄付額の最大9 割の減税を受けられるという手厚い制度ですが、地方創生が目的の制度
を悪用して、一部の企業が不当にふところを潤すような実態を見過ごすべきではありません。
内閣府令で禁止されている自治体から寄付法人への経済的見返りの有無について、これまでどのように調査し、把握してきたのか、類似の事案は他にはないのか、また再発防止に向けて、制度運用の見直しも含めてどのように取り組んでいくのか、伊東地方創生担当大臣に伺います。
9. 中東情勢
パレスチナのガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が始まってから間もなく1年2か月。パレスチナ側の死者はすでに4万人を超え、住民の9割が避難を余儀なくされています。ガザ地区の現状は極めて深刻で、一刻も早い停戦が必要です。
日本は、11 月20 日に国連安保理で提出された「停戦と人質解放を求める決議案」の共同提案国として積極的な役割を果たしましたが、アメリカの拒否権により否決されました。総理、日本政府はこの結果をどのように受け止め、今後、国連や他の国際機関を通じてどのように行動していくお考えですか?
ICC、国際刑事裁判所がイスラエルのネタニヤフ首相らに対し「人道に対する罪」などの容疑で逮捕状を発行しましたが、日本はICC 締約国として、これをどのように評価していますか?
イスラエル議会によるUNRWA 活動禁止法の可決は、人道支援活動に深刻な影響を及ぼします。政府はこれに対して「深刻な懸念」を表明しましたが、UNRWA活動継続のため、また、ガザ地区の人道危機を軽減するため、総理は具体的にどのような取組をお考えですか?
これまで中東和平において中立的かつ建設的な立場を維持してきた日本の役割は重要です。中東和平に向けての総理のリーダーシップをお願いします。
10. 最後に
総理は、所信表明の冒頭と結びに石橋湛山元総理の演説を引用されました。
石橋湛山を尊敬し、超党派石橋湛山研究会なる議員連盟に所属する私としては、自由な言論を重んじ、平和外交を重視し、積極財政による減税を唱えた湛山の思想こそが、時代を超えて我が国の未来を切り開く大きな力になると信じています。
石破総理には、先頭に立って、湛山の思想を現代に体現いただくことを心から期待申し上げ、質問とさせていただきます。
舟山康江参議院議員会長(参議院議員/山形県)は4日、参議院本会議において、石破総理大臣の所信表明演説に対する代表質問を行った。全文は以下の通り。
令和6年12月4日
石破内閣総理大臣所信表明演説に対する代表質問
国民民主党・新緑風会 舟山康江
1. はじめに
国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表して、石破総理の所信表明演説に対して質問を致します。
先の衆議院総選挙は、どの政党も過半数に届かない結果となり、表面的には自公政権が継続したものの、衆議院では過半数に満たない「少数与党政権」に転じました。
今後は、政府・与党の事前調整で決めたことを野党に追認させるという政策決定は通じません。与野党の熟議を通して、より広い民意を反映する政策決定への変更を国民が支持した結果です。まさに石破総理が所信表明演説で石橋湛山元総理の演説を引用し強調したとおりですが、逆に言えば、これまでの政権は、他党の意見を丁寧に聞くこと、可能な限りの幅広い合意形成など、当たり前の過程を怠ってきたことを物語っています。従来の政権の反省点を含めて、今後の政治のあるべき姿に向けた総理の決意をまずお聞きします。
与党過半数割れの原因の1 つは、石破総理の政治姿勢が変節したとの疑念を、多くの国
民が抱いた点です。総裁選時、勝利目当てに心にもないことを語っていたとは思いません。むしろ本音を訴え、本気で実現しようと意気込んでおられたものの、自民党という組織はそう甘くはなかった。総理といえども自民党の中で舵取りするには、様々な意見に配慮せざるを得ず、敢えて持論を封印し、そのチャンスをうかがっているのですよね?総裁選での主張を後退させてないことを明言して下さい。
例えば、「駐留に伴う諸問題の解決にも取り組む」とは、日米地位協定の改定も視野に入れているのか、お答え下さい。
総理、安心して下さい。まさに与党だけでは何も進まない状況の今、野党の力を上手く活かして下さい。多くの野党、そして国民民主党は、日米地位協定改定や、金融所得課税強化、政策活動費廃止を含む政治改革、農業の直接支払い拡充など、総理のかねてからの主張に大賛成です。ぜひ一緒に前に進めましょう!
2. 手取りを増やす。
私たち国民民主党は、「手取りを増やす!」政策を前面に掲げて総選挙を戦いました。その具体策の1 つが、基礎控除の拡大、いわゆる「103 万円の壁」の引き上げです。
控除制度は、「生活に必要な最低限の生きるためのコストは非課税」という根本原則に則ったもので、現在の「課税最低限」は、基礎控除48 万円と給与所得控除55 万円を合わせて103 万円です。1995 年までは物価上昇等に合わせて引き上げていましたが、それ以降は放置。この30 年、物価のみならず税金や社会保険料引き上げで「生きるためのコスト」が上がる中、控除額が不変、では明らかに不合理です。
財務省の国際比較の資料では、今年1 月現在の、日本の単身者の課税最低限は、日米英独仏の中で、最も低い金額です。
総理がこれらをご理解頂き、所信表明でも引き上げを明言されたことは率直に評価致しますが、問題は引上げ額です。国民民主党は、最低賃金決定の際の考慮要素として「労働者が健康で文化的な最低限度の生活を営むことができるよう」にと明確に示されていることからも、その上昇率に合わせるべきとの観点に立って、178 万円への引き上げを提案していますので、ぜひ総理のリーダーシップで決断頂きたいと思いますが、いかがですか? 税金を集めて使う立場ではなく、税金を納める国民の立場を考えたご答弁をお願いします。
合わせて、「暫定」と言いながら半世紀も続いているガソリン等の暫定税率の廃止については、所信の中で、「自動車関係諸税全体の見直しの中で」ではなく、「見直しに向けて検討」と、踏み込んでいますので、まずは先行して決断頂けるものと確信していますが、その決意をお聞かせ下さい。
3. 人への投資
人づくりこそ国づくり。我が党が結党以来一貫して主張してきたフレーズを、まさに直球で総理が所信で使われたことに敬意を表します。
国民民主党は、人への投資として、年5兆円程度の「教育国債」発行で、子育て予算と教育・科学技術予算を倍増すべきと提案し続けてきました。安易な借金を推奨しているわけではなく、まさに教育や子育ては未来への投資であることから、未来からお金を先にお借りして投資をする、そして、将来、大きく育った人材から投資分を回収するべき、という趣旨です。これこそ人づくりの1丁目1番地と考えますが、総理の見解をお聞かせ下さい。
OECDが9月にまとめた報告書によれば、日本の公財政教育支出の対GDP 比は2.9%
と、35カ国のうち2番目に低い水準です。また、大学や専門学校などの高等教育に対する家計負担割合は、比較できる30カ国の中で3番目の高水準です。改めて、総理が表明した「公教育の再生」とは具体的に何か。総理の問題意識と公的支出増額も含めた解決方向をお聞かせ下さい。
我が国の教育現場での深刻な問題は、授業以外に割かなければならない時間が余りに多い点です。同じくOECDの調査では、教員の労働時間中、授業に充てる時間はわずか30%で平均を大幅に下回ります。実際、現場の先生からは、家庭の問題や心の悩みなど、本来カウンセラーなどの専門家が対応すべき相談も多く、残業を余儀なくされるほか、帰宅後もメールや電話での相談に応じることもあり、気が休まる暇がない、寄り添ってあげたいけどもう限界!との悲鳴が聞こえてきます。専門家の養成や配置、拡充も含めて、学校現場の抜本的な改革が必要と考えますが、総理の問題意識をお聞かせ下さい。
4. 災害復旧事業のあり方
総理は重要政策課題の1つに「防災」を挙げています。
気候変動の影響も相まって、近年、自然災害が多発する中、時宜を得たもので、私も問題意識を共有しますし、能登半島地震など様々な災害からの復旧・復興に、与野党の枠を超えて取り組む必要があります。
そういう中で、まず確認したいのは、「皆さんの陳情が政府を動かした」「自分たちが政府に要望したから激甚指定を受けられた」などの一部の与党議員からの発言です。総理、災害復旧事業は、要望の有無で扱いが変わるのでしょうか?
その上で、激甚に指定されるほどの大規模災害でも、「被災者の生活と生業(なりわい)再建に向けた対策パッケージ」のような手厚い支援策が講じられる場合とそうでない場合に分かれ、被災地での不公平感につながっています。発動基準はあるのでしょうか?今回の総合経済対策でも、「これまでに策定した支援パッケージを踏まえながら、早急かつ柔軟に対応する」との記載があり、ぜひ前向きな対応をお願いします。
5. 鉄路の復旧事業
災害時に利用可能な災害復旧事業は、通常の補助事業よりも高い補助率が適用されます。中でも、例えば、河川、道路、港湾、下水道、公園などの公共土木施設ほか、公立学校、公営住宅、児童福祉施設、老人福祉施設など、及び農地や農業用施設については、通常の災害復旧事業でも国庫補助と地方交付税措置により実質的な地元負担は1.5%から2%程度、激甚災害に指定されると0.6%から0.8%に軽減されます。
その理由は、「公共性が高い」からです。では、「鉄道」はどうでしょうか?鉄道は「公共交通」と呼ばれ、まさに公共性が高い施設です。にもかかわらず、災害時でも高率の補助が受けられません。なぜですか?民間事業者だから、というのがお決まりの答えですが、公共性が高い鉄道の復旧も、公共土木施設等と同様の支援を行うべきではないでしょうか?政界きっての鉄道好きの石破総理の見解をお聞かせ下さい。
加えて、そもそも公共交通は採算だけで論じるべきではありません。
参議院の「国民生活・経済及び地方に関する調査会」は、本年、中間とりまとめの中で「社会資本としての地域公共交通を維持していくため、国が積極的に役割を果たしていくことが求められる」とし、道路と比較して予算配分が極めて少ないことも合わせて指摘しました。これは、与野党超えた共通認識で問題提起したもので、「公共交通は公共サービスであるから公共がしっかり責任を持ってサービスを提供していくもの」であり、「目指すものは収益の最大化ではなく・・社会全体の利益を最大化すること」との参考人意見と合わせて、総理にも重く受け止めて頂きたいと思います。
現在の公共交通施策は、国の役割をあくまで「民間や地域の取組への『支援』」にとどめています。支援ではなく国が主体的に役割を果たす方向に転換するべきではないですか?
通常の支援が極めて少ない中、平時の維持でさえ大変な過疎地における赤字路線は、ひとたび被災すればたちまち立ち行かなくなるのは当然です。改めて、鉄道を含む公共交通に関する予算を大胆に増額するべきではないでしょうか?昨日のご答弁では、「法改正し、予算を大幅拡充した」とありましたが、令和6年度を含めて当初予算はほぼ毎年減少、前年度補正を合わせても今年度は前年度より減っていること、そもそも交付金を除く令和6年度当初予算ベースで、同じく公共事業に分類される道路整備予算の68分の1程度にとどまっているお寒い現状を付言し、総理にお伺いします。
6. 河川改修の必要性
公共交通関係予算ほどでないにせよ、河川整備の予算も道路予算の44%程度と極めて少ない現状です。
「地球温暖化に伴う気候変動の影響により、今後更に大雨や短時間強雨の発生頻度や降水量などが増大することが予測されており、大規模な水災害が発生する懸念が高まります。」これは、国土交通省作成の河川事業概要にある記述です。
豪雨災害の多くを、河川の氾濫がもたらしている現状を鑑みると、河川改修は待ったなしです。令和3年4月改定の「気候変動を踏まえた治水計画のあり方」でも、気候変動による将来の降雨量の増加などを考慮した基本高水の設定を提言しています。
「計画降雨継続時間での降雨量変化倍率」が全国で増える中でも、とりわけ東北地方で高くなることが予測されています。実際、令和に入ってからはどこかで毎年のように甚大な被害が発生している現状を目の当たりにすると、特に東北での河川改修、基本高水の引き上げは待ったなしです。今年の豪雨を振り返ると、九州では降水量900ミリ超を記録しました。その一方で、東北では400ミリ超で「記録的大雨」と呼ばれ、各地で氾濫が相次ぎ、甚大な被害が生じました。総理、早急に事業に取り組む必要があるのではないでしょうか?
合わせて、多くの河川が土砂の堆積や支障木により、氾濫が起こりやすい状況下にあり、改めて、浚渫等の緊急事業を拡充するべきと考えますが、総理の認識を伺います。
7. 農地の役割
豪雨災害に接する中で、私は改めて農地の役割を再認識しています。
少し古い調査ですが、日本学術会議が2001 年に行った試算では、農地の持つ洪水防止、
すなわち大雨時における貯水能力の貨幣価値は、約3 兆5000 億円にも及びます。逆に言えば、もし農地がなかったら、被害はもっと甚大だったはずです。総理は、このような役割をどのように認識し、どう評価すべきと考えますか?
同じ試算では、他にも河川流況安定機能で約1 兆5000 億円、土砂崩壊防止機能で約5000億円、気候緩和機能や保健休養・やすらぎ機能など、合計8 兆円超の効果があるとされています。食料生産の基盤であると同時に、防災・減災の他、多面的機能を担う農業はまさに、我が国安全保障の根幹の1つです。
一方で、残念ながら現状は、農地もそれを利用する農業者も減少、国内生産の増大も実現できず自給率は下がる一途で、生産基盤の弱体化と農村の疲弊に歯止めがかかっていません。その理由は、『農業では食べていけないから』です。まさに、「手取りを増やす」政策を農業でも進める必要があります。
5月に改正された「食料・農業・農村基本法」では、「合理的な価格の形成」が規定されました。価格転嫁は業種を超えて必要ですが、法律で強制するものではなく、価格は市場で決まります。そもそも、現行基本法では「価格形成は市場に任せ、所得の確保は政策に委ねる」との明確な柱があると認識していますが、総理、この基本理念と矛盾はないのでしょうか?
また、前述の農業の多面的役割は、必ずしも価格に反映されるものではない中、各国ともその役割に注目し、直接支払いの充実により再生産可能な所得の確保に向けた施策を講じています。
石破総理は、今年7月のインタビューでは、「直接所得補償」という表現まで使うなど、農業に対する直接支払いの必要性に言及されています。まさに決断の時です。改めて所得確保に向けた直接支払い制度に対する総理の見解を伺います。
国民民主党は、生産基盤である農地の維持に向けた「食料安全保障基礎支払い」の導入を提案しています。合わせて、複雑化している現在のいわゆる水活、畑ゲタ、多面的機能支払い、環境直払い、中山間直払いなどを再整理し、体系的な直接支払い制度に再構築すべきと考えますが、その必要性について、総理の見解を伺います。加えて、中途半端な見直しに終わった改正基本法を再改正するべきと考えますが、合わせて総理の見解をお聞かせ下さい。
8. 企業版ふるさと納税制度の問題点
私たち国民民主党は、先月20 日に提出した来年度税制改正に関する要望の一つとして、今年度末までの期限を5年間延長する方向で政府・与党が検討を進めている企業版ふるさと納税による地方創生事業について、「企業による寄付によって公平性に疑義が抱かれないように透明性を確保する」ことを求めました。
折しも先月22 日に、福島県国見町の「地域再生計画」の認定を国が取り消す事態に至りました。救急車開発事業の原資として企業版ふるさと納税を利用して集められた寄付が、救急車の製造の受注を通じて、寄付元の企業に環流されていた事案であり、入札を装いながら実質は受注先企業以外の参入が困難な条件が付されていたことが問題視されました。
寄付額の最大9 割の減税を受けられるという手厚い制度ですが、地方創生が目的の制度
を悪用して、一部の企業が不当にふところを潤すような実態を見過ごすべきではありません。
内閣府令で禁止されている自治体から寄付法人への経済的見返りの有無について、これまでどのように調査し、把握してきたのか、類似の事案は他にはないのか、また再発防止に向けて、制度運用の見直しも含めてどのように取り組んでいくのか、伊東地方創生担当大臣に伺います。
9. 中東情勢
パレスチナのガザ地区でイスラエル軍とイスラム組織ハマスとの戦闘が始まってから間もなく1年2か月。パレスチナ側の死者はすでに4万人を超え、住民の9割が避難を余儀なくされています。ガザ地区の現状は極めて深刻で、一刻も早い停戦が必要です。
日本は、11 月20 日に国連安保理で提出された「停戦と人質解放を求める決議案」の共同提案国として積極的な役割を果たしましたが、アメリカの拒否権により否決されました。総理、日本政府はこの結果をどのように受け止め、今後、国連や他の国際機関を通じてどのように行動していくお考えですか?
ICC、国際刑事裁判所がイスラエルのネタニヤフ首相らに対し「人道に対する罪」などの容疑で逮捕状を発行しましたが、日本はICC 締約国として、これをどのように評価していますか?
イスラエル議会によるUNRWA 活動禁止法の可決は、人道支援活動に深刻な影響を及ぼします。政府はこれに対して「深刻な懸念」を表明しましたが、UNRWA活動継続のため、また、ガザ地区の人道危機を軽減するため、総理は具体的にどのような取組をお考えですか?
これまで中東和平において中立的かつ建設的な立場を維持してきた日本の役割は重要です。中東和平に向けての総理のリーダーシップをお願いします。
10. 最後に
総理は、所信表明の冒頭と結びに石橋湛山元総理の演説を引用されました。
石橋湛山を尊敬し、超党派石橋湛山研究会なる議員連盟に所属する私としては、自由な言論を重んじ、平和外交を重視し、積極財政による減税を唱えた湛山の思想こそが、時代を超えて我が国の未来を切り開く大きな力になると信じています。
石破総理には、先頭に立って、湛山の思想を現代に体現いただくことを心から期待申し上げ、質問とさせていただきます。