森ようすけ政調副会長(衆議院議員/東京13区)は28日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった経済安全保障推進法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
経済安全保障推進法改正案に対する本会議質問
令和8年4月28日
国民民主党・無所属クラブ 森ようすけ
国民民主党・無所属クラブの森ようすけです。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました経済安全保障推進法改正案について質問します。
安全保障の概念は、従来の防衛・外交分野にとどまらず、食料、エネルギー、半導体、医薬品、医療機器等を含む経済分野へと大きく広がりを見せています。特定の国、地域への過度な依存を回避し、強靭なサプライチェーンを構築すること、国際経済・社会において不可欠性の高い優れた技術を保有することなど、総合的な経済安全保障体制の強化は、現在の国際情勢を踏まえて不可欠な課題です。
「自分の国は自分で守る」。我が党が掲げる主要政策の柱の一つです。その実現のためにも、経済安全保障の推進は極めて重要であり、さらなる政策の強化と不断の見直しが必要であると考えていることを冒頭申し上げて、質問に入ります。
【イラン情勢に伴う重要物資の安定確保】
(重要物資の安定確保の現況)
まず、イラン情勢に伴う重要物資の安定確保について伺います。
今回の情勢を受け、我が国の資源調達の脆弱性や経済安全保障上の課題が改めて浮き彫りとなりました。過去二度のオイルショックの教訓を踏まえ、石油備蓄体制が整備されてきたことは、先人たちの尽力の賜物です。
しかしながら、燃料や石油関連製品が社会の隅々まで十分に行き渡っているのか。また、先行きが未だ不透明な中、重要物資の供給を滞りなく継続できるのか。依然として懸念が残ります。先が見通せない中、不安を感じている国民や供給不足に直面している事業者の声も多く寄せられています。日々刻々と変化し先行きが不透明な情勢の中にあって、重要物資の安定確保の現況について、重要物資安定確保担当大臣にお伺いします。(重要物資安定確保担当大臣)
(医療物資の供給状況)
次に、医療物資の供給状況について伺います。
医療現場においては、ニトリルグローブやメディカルエプロン、それに加え、シリンジや点滴キット等の供給制約が生じており、状況は一層深刻化しているとの声が現場から寄せられています。
大規模病院と小さな診療所との間における供給の優先順位の差や、流通段階における売り控え、さらには政府における対応の偏り。供給量全体としては不足していないと政府は説明していますが、様々な要因により現場に届いていない実態が存在していることは看過できません。政府として、医療物資の供給状況が一層深刻化している認識があるのか、また、情報提供窓口を通じた対応について、医療機関の規模や機能によって差が生じることなく、迅速かつ適切に対応できているのか、そして、今後の改善の見通しについてどのように考えているのか、厚生労働大臣にお伺いします。(厚生労働大臣)
(建築資材の供給状況、従事者の処遇確保)
建築資材の供給不足も深刻です。住宅設備や建材全般にわたり供給の不安定化が指摘されている中、塗装業や防水業で使用される資材についても入手が困難になっているとの声が強まっています。具体的には「必要な資材が確保できず、仕事はあるにもかかわらず受注を断らざるを得ず、結果として収入が途絶えてしまう」といった切実な実態を聞いています。こうした状況は、「仕事があるにもかかわらず受けることができない」という機会損失を生じさせており、小規模事業者や個人事業主の事業に深刻な影響を及ぼしている問題です。
現在の建築資材の供給状況について、政府としてどのように認識しているのか。また、資材供給の安定化に向けて、どのような対応策を講じているのか。さらに、資材不足により収入減に直面している小規模事業者や個人事業主の実態をどのように把握し、どのような対応策を考えているか。国土交通大臣にお伺いします。(国土交通大臣)
(イラン情勢を受けた経済安全保障政策の見直し)
本改正案は、今般のイラン情勢が改めて顕在化させた我が国の経済安全保障の課題を、必ずしも十分に踏まえた内容とは言えないのではないかと考えます。今回のイラン情勢を受けて、我が国の経済安全保障政策のあり方そのものを見直す必要があると認識しているのか。また、経済安全保障推進法の施策の枠内で対応可能と考えているのか、それとも、本法案とは別の政策的な枠組みや追加的な措置によって対応すべきだと考えているのでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
あわせて、「特定重要物資」の指定についても伺います。今回の事態を踏まえ、石油関連製品や医療物資、建築資材などについて、追加指定の検討の是非についてどのように考えていますでしょうか。経済安全保障担当大臣にお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
【AIによる攻撃高度化に伴う経済安全保障の在り方】
(現行の法的枠組みでの対応可能性)
次に、急速に進化するAIがもたらす経済安全保障上の脅威について伺います。
アメリカでは、ベッセント財務長官がFRBパウエル議長、大手金融機関CEOとの緊急会合を開催し、AIによる高度なサイバー攻撃が金融システム全体に深刻な脅威となり得るとの強い警戒感が示されています。Anthropic社のClaude Mythosは、システム上の欠陥を特定し、極めて多数の脆弱性を既に発見しています。こうした技術の潜在的な危険性を踏まえ、一般公開を見送り、一部大手企業に公開を限定するなど、高度化するAIのリスク認識が国際的に急速に高まっています。
また、先週金曜日には片山金融担当大臣の呼びかけにより「AI脅威に対する金融分野のサイバーセキュリティー対策強化に関する官民連絡会議」が開催され、日本銀行の植田総裁や国内大手金融機関の幹部らが出席しました。金融システムは相互接続性が非常に高く、リアルタイムで処理されるため、サイバー攻撃によって直ちに市場への影響や信用不安にまで波及しうる特性があること、また、金融機関が重要インフラ機能を担っている上で、脆弱性の情報把握からパッチの適用までの迅速化、インシデントが発生した際の備えがこれまで以上に重要になると会議後に大臣から言及されました。
本法律では金融、電力、港湾等の15の基幹インフラ分野を対象として、設備導入や維持管理の委託に際し、届出・審査を行う制度が整備されており、今般の改正案では医療分野の追加が規定されています。しかしながら、AIによるサイバー攻撃の高度化が急速に進展する中で、こうした現行の制度的枠組みが、目前に迫りつつあるリスクに対して十分に対応し得るのかについては、大きな懸念があります。仮に、制度上の審査を経た設備やシステムであっても、高度化されたAIによって脆弱性が突かれ、侵害が生じた場合、従来の対応では限界があるのではないでしょうか。さらに、今後、諸外国においても同等の高性能AIが開発・展開されることも想定され、サイバー空間における経済安全保障への脅威は一層高度化・複雑化していくことが見込まれます。
高度化するAIがもたらす経済安全保障上のリスクを政府としてどのように認識しているのか。また、現行の経済安全保障推進法の枠組みが、こうした新たな脅威に対して十分に機能し得ると考えているのか、それとも制度の見直しや新たな対応が必要であると認識しているのか。さらに、AIの進展を踏まえ、経済安全保障への考え方そのものを見直す必要があるのではないでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(新たな対応の方向性)
アメリカでは一部企業において、自社のソフトウェア開発工程にClaude Mythosを組み込む動きがあります。基幹インフラ分野における届出・審査制度にとどまらず、基幹インフラシステム構築時からサイバーセキュリティー強化のためにAIを活用することを国が主導して行う必要性があるのではないでしょうか。また、超高度なAIによる攻撃を想定した脆弱性チェックやストレステストを各省庁がそれぞれの基幹インフラ分野において責任を持って実施していく体制を構築する必要があるのではないでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(選挙インフラの分野指定の検討)
広義の経済安全保障を捉える上で、民主主義の根幹である選挙への外国からの影響力行使を防止することも極めて重要です。選挙結果が外国勢力からの介入によって操作されることは、それが経済活動、経済方針にも大きな影響が出てくることになります。実際に他国の選挙において、外国勢力による選挙介入が確認されています。
我が国の選挙は紙の投票用紙で行われるものの、期日前投票や投票所受付、投票結果集計等のシステム導入がされているため、こうしたシステムが攻撃されて適正な選挙執行を歪められる可能性もあります。選挙システムの堅牢性を確保するためにも、現行の15の基幹インフラ分野に選挙インフラを指定することを今後検討するべきではないでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
【改正案の施策について】
(法施行後からの成果と評価)
次に、本法律施行後の成果と評価について伺います。
本法律は施行後3年を目途とした見直し規定が設けられており、現行制度の運用を通じて明らかとなった課題や、国際情勢の変化等を踏まえ、今回の改正案が提出されたものと認識しています。これまで、経済安全保障に係る基本方針の策定、重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度、先端的な重要技術の開発支援に関する制度、特許出願の非公開に関する制度等が講じられてきました。
法律に基づき講じた施策によって、現時点までにどのような具体的な成果が得られたと認識しているのか。とりわけ、指定した特定重要物資について、安定供給確保の取組がどの程度進展したと評価しているのかお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
(医療物資の特定重要物資への指定)
現在、特定重要物資として16物資が指定されていますが、そのうち医療関係物資は抗菌性物質製剤と人工呼吸器に限られています。それ以外の麻酔薬や昇圧薬、輸液、電解質製剤などについても安定供給のリスクが指摘されています。こうしたその他の医療物資を特定重要物資に指定する必要性についてどのように考えていますでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(安定供給確保に支障が生ずる場合の措置)
本改正案では、供給確保計画の認定を受けた事業者において、原材料供給者等の事業廃止や事業譲渡、海外移転等により安定供給確保に支障が生じる場合には、主務大臣が関係者に対して、必要な協力を求めることができるとされています。
これまでに、他の事業者の事業廃止等によって、認定を受けた供給確保計画の実施が困難となるおそれがある事例が具体的にどのように存在していたのでしょうか。また、任意の協力要請によって事態の改善にどの程度の効果が見込めるのか、どの程度の実効性が確保されると考えているのかお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
(基幹インフラ制度の対象分野の基準)
現在15分野の基幹インフラが指定され、改正案では医療分野の追加が規定されています。医療分野の追加に関しては、これまでも国会審議や有識者会議でも指摘がなされていたものの、対象に入れる必要はないと政府では判断していました。今回の見直しにおいて、個々の医療機関を基幹インフラ制度の対象とすることとした背景、理由は何でしょうか。また、下水道やダム等のその他の分野も重要な基幹インフラに含まれ得るところ、経済安全保障、国家安全保障の観点から具体的にどのような基準に基づき選定しているのでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(JBICによる海外事業支援)
最後に、JBICによる海外事業支援についてお伺いします。
本改正案では、経済安全保障上重要な海外事業を支援する新たな制度を創設することとされています。採算性に不確実性があり、既存の支援ツールだけでは民間企業から十分な投資が行われない一方で、経済安全保障上の効果が見込める海外事業を支援する方向性は理解します。一方で、国が損失リスクを引き受ける以上、対象事業の選定にあたっては具体的な基準を設けることが必要だと考えます。
国が損失リスクを負ってでも進めるほど、経済安全保障上の大きな効果がある事業に限って認めるべきであり、可能な限り定量的な評価に基づく選定が求められます。対象事業が必要以上に拡大しないように、また、損失リスクに見合わない事業が選定されないように、透明性の高い評価を行うことや、認定後にも適切なモニタリングを行う体制が必要であると考えますが、ご見解をお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
(終わりに)
経済安全保障推進法が成立した令和4年から3年が経過しました。この間、経済安全保障を巡る状況は大きく変化し、とりわけ急激に高度化するAIがもたらす新たな脅威は、重大な課題として顕在化しています。
今後の国会における審議においては、現行法の延長線上にとどまるのではなく、こうした環境変化を正面から捉え、真に強固な経済安全保障体制の構築に資する制度の在り方について、議論を深めていく必要があります。そうした観点も含めた充実した審議が行われることを強く求め、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。
森ようすけ政調副会長(衆議院議員/東京13区)は28日、国民民主党を代表し、衆議院本会議で議題となった経済安全保障推進法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
経済安全保障推進法改正案に対する本会議質問
令和8年4月28日
国民民主党・無所属クラブ 森ようすけ
国民民主党・無所属クラブの森ようすけです。私は、会派を代表して、ただいま議題となりました経済安全保障推進法改正案について質問します。
安全保障の概念は、従来の防衛・外交分野にとどまらず、食料、エネルギー、半導体、医薬品、医療機器等を含む経済分野へと大きく広がりを見せています。特定の国、地域への過度な依存を回避し、強靭なサプライチェーンを構築すること、国際経済・社会において不可欠性の高い優れた技術を保有することなど、総合的な経済安全保障体制の強化は、現在の国際情勢を踏まえて不可欠な課題です。
「自分の国は自分で守る」。我が党が掲げる主要政策の柱の一つです。その実現のためにも、経済安全保障の推進は極めて重要であり、さらなる政策の強化と不断の見直しが必要であると考えていることを冒頭申し上げて、質問に入ります。
【イラン情勢に伴う重要物資の安定確保】
(重要物資の安定確保の現況)
まず、イラン情勢に伴う重要物資の安定確保について伺います。
今回の情勢を受け、我が国の資源調達の脆弱性や経済安全保障上の課題が改めて浮き彫りとなりました。過去二度のオイルショックの教訓を踏まえ、石油備蓄体制が整備されてきたことは、先人たちの尽力の賜物です。
しかしながら、燃料や石油関連製品が社会の隅々まで十分に行き渡っているのか。また、先行きが未だ不透明な中、重要物資の供給を滞りなく継続できるのか。依然として懸念が残ります。先が見通せない中、不安を感じている国民や供給不足に直面している事業者の声も多く寄せられています。日々刻々と変化し先行きが不透明な情勢の中にあって、重要物資の安定確保の現況について、重要物資安定確保担当大臣にお伺いします。(重要物資安定確保担当大臣)
(医療物資の供給状況)
次に、医療物資の供給状況について伺います。
医療現場においては、ニトリルグローブやメディカルエプロン、それに加え、シリンジや点滴キット等の供給制約が生じており、状況は一層深刻化しているとの声が現場から寄せられています。
大規模病院と小さな診療所との間における供給の優先順位の差や、流通段階における売り控え、さらには政府における対応の偏り。供給量全体としては不足していないと政府は説明していますが、様々な要因により現場に届いていない実態が存在していることは看過できません。政府として、医療物資の供給状況が一層深刻化している認識があるのか、また、情報提供窓口を通じた対応について、医療機関の規模や機能によって差が生じることなく、迅速かつ適切に対応できているのか、そして、今後の改善の見通しについてどのように考えているのか、厚生労働大臣にお伺いします。(厚生労働大臣)
(建築資材の供給状況、従事者の処遇確保)
建築資材の供給不足も深刻です。住宅設備や建材全般にわたり供給の不安定化が指摘されている中、塗装業や防水業で使用される資材についても入手が困難になっているとの声が強まっています。具体的には「必要な資材が確保できず、仕事はあるにもかかわらず受注を断らざるを得ず、結果として収入が途絶えてしまう」といった切実な実態を聞いています。こうした状況は、「仕事があるにもかかわらず受けることができない」という機会損失を生じさせており、小規模事業者や個人事業主の事業に深刻な影響を及ぼしている問題です。
現在の建築資材の供給状況について、政府としてどのように認識しているのか。また、資材供給の安定化に向けて、どのような対応策を講じているのか。さらに、資材不足により収入減に直面している小規模事業者や個人事業主の実態をどのように把握し、どのような対応策を考えているか。国土交通大臣にお伺いします。(国土交通大臣)
(イラン情勢を受けた経済安全保障政策の見直し)
本改正案は、今般のイラン情勢が改めて顕在化させた我が国の経済安全保障の課題を、必ずしも十分に踏まえた内容とは言えないのではないかと考えます。今回のイラン情勢を受けて、我が国の経済安全保障政策のあり方そのものを見直す必要があると認識しているのか。また、経済安全保障推進法の施策の枠内で対応可能と考えているのか、それとも、本法案とは別の政策的な枠組みや追加的な措置によって対応すべきだと考えているのでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
あわせて、「特定重要物資」の指定についても伺います。今回の事態を踏まえ、石油関連製品や医療物資、建築資材などについて、追加指定の検討の是非についてどのように考えていますでしょうか。経済安全保障担当大臣にお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
【AIによる攻撃高度化に伴う経済安全保障の在り方】
(現行の法的枠組みでの対応可能性)
次に、急速に進化するAIがもたらす経済安全保障上の脅威について伺います。
アメリカでは、ベッセント財務長官がFRBパウエル議長、大手金融機関CEOとの緊急会合を開催し、AIによる高度なサイバー攻撃が金融システム全体に深刻な脅威となり得るとの強い警戒感が示されています。Anthropic社のClaude Mythosは、システム上の欠陥を特定し、極めて多数の脆弱性を既に発見しています。こうした技術の潜在的な危険性を踏まえ、一般公開を見送り、一部大手企業に公開を限定するなど、高度化するAIのリスク認識が国際的に急速に高まっています。
また、先週金曜日には片山金融担当大臣の呼びかけにより「AI脅威に対する金融分野のサイバーセキュリティー対策強化に関する官民連絡会議」が開催され、日本銀行の植田総裁や国内大手金融機関の幹部らが出席しました。金融システムは相互接続性が非常に高く、リアルタイムで処理されるため、サイバー攻撃によって直ちに市場への影響や信用不安にまで波及しうる特性があること、また、金融機関が重要インフラ機能を担っている上で、脆弱性の情報把握からパッチの適用までの迅速化、インシデントが発生した際の備えがこれまで以上に重要になると会議後に大臣から言及されました。
本法律では金融、電力、港湾等の15の基幹インフラ分野を対象として、設備導入や維持管理の委託に際し、届出・審査を行う制度が整備されており、今般の改正案では医療分野の追加が規定されています。しかしながら、AIによるサイバー攻撃の高度化が急速に進展する中で、こうした現行の制度的枠組みが、目前に迫りつつあるリスクに対して十分に対応し得るのかについては、大きな懸念があります。仮に、制度上の審査を経た設備やシステムであっても、高度化されたAIによって脆弱性が突かれ、侵害が生じた場合、従来の対応では限界があるのではないでしょうか。さらに、今後、諸外国においても同等の高性能AIが開発・展開されることも想定され、サイバー空間における経済安全保障への脅威は一層高度化・複雑化していくことが見込まれます。
高度化するAIがもたらす経済安全保障上のリスクを政府としてどのように認識しているのか。また、現行の経済安全保障推進法の枠組みが、こうした新たな脅威に対して十分に機能し得ると考えているのか、それとも制度の見直しや新たな対応が必要であると認識しているのか。さらに、AIの進展を踏まえ、経済安全保障への考え方そのものを見直す必要があるのではないでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(新たな対応の方向性)
アメリカでは一部企業において、自社のソフトウェア開発工程にClaude Mythosを組み込む動きがあります。基幹インフラ分野における届出・審査制度にとどまらず、基幹インフラシステム構築時からサイバーセキュリティー強化のためにAIを活用することを国が主導して行う必要性があるのではないでしょうか。また、超高度なAIによる攻撃を想定した脆弱性チェックやストレステストを各省庁がそれぞれの基幹インフラ分野において責任を持って実施していく体制を構築する必要があるのではないでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(選挙インフラの分野指定の検討)
広義の経済安全保障を捉える上で、民主主義の根幹である選挙への外国からの影響力行使を防止することも極めて重要です。選挙結果が外国勢力からの介入によって操作されることは、それが経済活動、経済方針にも大きな影響が出てくることになります。実際に他国の選挙において、外国勢力による選挙介入が確認されています。
我が国の選挙は紙の投票用紙で行われるものの、期日前投票や投票所受付、投票結果集計等のシステム導入がされているため、こうしたシステムが攻撃されて適正な選挙執行を歪められる可能性もあります。選挙システムの堅牢性を確保するためにも、現行の15の基幹インフラ分野に選挙インフラを指定することを今後検討するべきではないでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
【改正案の施策について】
(法施行後からの成果と評価)
次に、本法律施行後の成果と評価について伺います。
本法律は施行後3年を目途とした見直し規定が設けられており、現行制度の運用を通じて明らかとなった課題や、国際情勢の変化等を踏まえ、今回の改正案が提出されたものと認識しています。これまで、経済安全保障に係る基本方針の策定、重要物資の安定的な供給の確保に関する制度、基幹インフラ役務の安定的な提供の確保に関する制度、先端的な重要技術の開発支援に関する制度、特許出願の非公開に関する制度等が講じられてきました。
法律に基づき講じた施策によって、現時点までにどのような具体的な成果が得られたと認識しているのか。とりわけ、指定した特定重要物資について、安定供給確保の取組がどの程度進展したと評価しているのかお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
(医療物資の特定重要物資への指定)
現在、特定重要物資として16物資が指定されていますが、そのうち医療関係物資は抗菌性物質製剤と人工呼吸器に限られています。それ以外の麻酔薬や昇圧薬、輸液、電解質製剤などについても安定供給のリスクが指摘されています。こうしたその他の医療物資を特定重要物資に指定する必要性についてどのように考えていますでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(安定供給確保に支障が生ずる場合の措置)
本改正案では、供給確保計画の認定を受けた事業者において、原材料供給者等の事業廃止や事業譲渡、海外移転等により安定供給確保に支障が生じる場合には、主務大臣が関係者に対して、必要な協力を求めることができるとされています。
これまでに、他の事業者の事業廃止等によって、認定を受けた供給確保計画の実施が困難となるおそれがある事例が具体的にどのように存在していたのでしょうか。また、任意の協力要請によって事態の改善にどの程度の効果が見込めるのか、どの程度の実効性が確保されると考えているのかお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
(基幹インフラ制度の対象分野の基準)
現在15分野の基幹インフラが指定され、改正案では医療分野の追加が規定されています。医療分野の追加に関しては、これまでも国会審議や有識者会議でも指摘がなされていたものの、対象に入れる必要はないと政府では判断していました。今回の見直しにおいて、個々の医療機関を基幹インフラ制度の対象とすることとした背景、理由は何でしょうか。また、下水道やダム等のその他の分野も重要な基幹インフラに含まれ得るところ、経済安全保障、国家安全保障の観点から具体的にどのような基準に基づき選定しているのでしょうか。(経済安全保障担当大臣)
(JBICによる海外事業支援)
最後に、JBICによる海外事業支援についてお伺いします。
本改正案では、経済安全保障上重要な海外事業を支援する新たな制度を創設することとされています。採算性に不確実性があり、既存の支援ツールだけでは民間企業から十分な投資が行われない一方で、経済安全保障上の効果が見込める海外事業を支援する方向性は理解します。一方で、国が損失リスクを引き受ける以上、対象事業の選定にあたっては具体的な基準を設けることが必要だと考えます。
国が損失リスクを負ってでも進めるほど、経済安全保障上の大きな効果がある事業に限って認めるべきであり、可能な限り定量的な評価に基づく選定が求められます。対象事業が必要以上に拡大しないように、また、損失リスクに見合わない事業が選定されないように、透明性の高い評価を行うことや、認定後にも適切なモニタリングを行う体制が必要であると考えますが、ご見解をお伺いします。(経済安全保障担当大臣)
(終わりに)
経済安全保障推進法が成立した令和4年から3年が経過しました。この間、経済安全保障を巡る状況は大きく変化し、とりわけ急激に高度化するAIがもたらす新たな脅威は、重大な課題として顕在化しています。
今後の国会における審議においては、現行法の延長線上にとどまるのではなく、こうした環境変化を正面から捉え、真に強固な経済安全保障体制の構築に資する制度の在り方について、議論を深めていく必要があります。そうした観点も含めた充実した審議が行われることを強く求め、質問を終わります。ご清聴ありがとうございました。