平戸航太国対副委員長(参議院議員/全国比例)は12日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となったデジタル行政推進法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律等の一部を改正する法律案」
「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」
質問原稿
令和8年6月12日
国民民主党・新緑風会
平戸航太
国民民主党・新緑風会の平戸航太です。ただいま議題となりました、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律等の一部改正案、並びに、個人情報の保護に関する法律等の一部改正案について、会派を代表し、松本大臣に質問いたします。
私は家族のがん闘病を機に、「技術者として、一人でも多くの命を救いたい」と志し、がん治療装置の開発に携わってきました。しかし、かつて世界を牽引した日本のモノづくり産業や技術力は、世界に後れを取っています。技術大国・日本を復活させ、「メイド・イン・ジャパン」の技術やサービスを世界に広げていくことこそ、私が政治家として果たすべき使命です。
データは次世代の経済成長を牽引する原動力です。とりわけ、我が国がAI開発において、国際的な後れを取り戻すためには、円滑なデータ利活用が不可欠です。そして、その前提となるのは、個人の権利利益の保護と、国民の安心と信頼の担保です。
【デジタル行政推進法等改正案について】
激化するグローバルなAI開発競争の中で、我が国のデジタル主権を確立するとともに、自由で安全なデジタル社会の確立に向けて、まずはデジタル行政推進法等改正案について、2点伺います。
(1)第一に、認定審査の迅速化と参入機会確保についてです。
産業界にとってビジネスはスピードが命であり、認定審査の長期化は激しいAI開発競争における致命的な遅れにつながります。迅速な認定手続を求めるとともに、認定を受けた特定の事業者にデータが集中して市場の公平性が損なわれないか、中小企業の参入機会が確保されるのか、という視点が極めて重要です。大企業だけでなく、優れた技術を持つ中小企業やスタートアップが公平にデータにアクセスし、AI開発等に参加できる環境をどう構築するのか、お伺いいたします。
(2)第二に、デジタル庁の司令塔機能の発揮と制度の実効性担保についてです。
本改正案の実効性は、デジタル庁以外の府省庁や自治体の対応に左右されるとの懸念があります。本改正案では、各府省庁には「データの提供を求めることができる」とする一方、自治体に対しては「必要な協力を求めることができる」にとどまり、大幅な裁量が残されています。各機関がデータ提供に消極的になれば、円滑なデータ利活用は進みません。データの開放に向け、デジタル庁が強力な司令塔として各府省庁にどのように横串を通し、消極的な姿勢を打破していくのか。また、対応が未知数とされる自治体に対して、いかに協力とデータ開放を働きかけていくのか、お伺いいたします。
【個人情報保護法等改正案について】
続いて、個人情報保護法等改正案について伺います。
個人情報保護法は、第一条にある通り「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」を目的としています。
(3)本改正案は、「規律遵守の実効性確保のための規律」など、個人の権利利益の保護が強化される部分がある一方で、懸念される点もあります。「統計作成等特例」により、AI開発を含む統計作成等が目的であれば、病歴、障がい、健康診断の結果などの要配慮個人情報さえも、本人同意を得ずに第三者に提供できるようになり、個人の権利利益が大きく損なわれる恐れがあります。
衆議院の審議において松本大臣は、提供前に氏名等を一律に削除・仮名化しない理由として、「構造化されていないデータの存在」や「提供元である医療機関等の多大な負担」を挙げ、「ある程度の努力義務にとどめる」「ガイドラインで対応する」旨の答弁をされました。しかし、提供元の負担軽減や開発の利便性を優先するあまり、機微に触れる要配慮個人情報の保護が事業者の「努力義務」や「ガイドライン頼み」に委ねられてしまうのでは、国民の不安は決して払拭されません。本改正案が、個人の権利利益の保護をないがしろにする改正ではないことを示し、国民の不安を取り除くための説明責任があると考えますが、見解をお伺いいたします。
(4)そのうえで、統計作成等特例におけるPETs(プライバシー強化技術)の推進、ならびにデータ仮名化等の必要性について伺います。
AI開発等において個人情報を取得する場合、本人同意を不要とする本特例の創設は、国産AIの育成を後押しする極めて重要な一歩です。
一方で、病歴などの機微な情報を扱う以上、リスクベースの観点が不可欠です。個人特定を防ぐPETsの導入や開発支援を国として推進することは大前提ですが、専門家が指摘するように、AIの出力等から個人情報が推測・復元されるリスクは、完全には排除できません。したがって、データ取得側のPETs導入を推進すると同時に、データ提供側において少なくとも「仮名化」や「匿名化」を原則とすべきではないでしょうか。特に、行政に対する国民の信頼を確保するため、行政機関等が個人情報を提供する場合には「匿名化」すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
(5)また、本改正案によって、AI開発事業者が、他の個人情報取扱事業者や行政機関などが取得した個人情報および個人関連情報を大量に取得してAI開発を行うことで、個人情報が推測・復元されるリスクが一段と高まることが懸念されます。
取得した個人情報および個人関連情報から個人の特定や分析を禁止するとともに、EUのAI規則を参考に、個人やグループの社会的・経済的脆弱性などにつけこむことや、評価・分類を目的とすることなどを「禁止される行為」として厳格に規制すべきではないでしょうか。見解をお伺いいたします。
(6)次に、子どもの個人情報保護とリテラシー教育の強化についてです。
判断能力の不十分な子どもの「最善の利益」を優先する責務規定が設けられたことは評価いたします。しかし、「16歳未満」とした保護対象は、民法の規定に合わせ、より広く「18歳未満(未成年)」とすべきではないでしょうか、見解をお伺いいたします。
(7)また、不当なプロファイリングやターゲティング広告から子どもを守るためには、法規制だけでなく、社会全体での「リテラシー教育」が不可欠です。文部科学省等と連携し、子どもたちがデジタル社会を生き抜く力を育む教育強化の必要性に対する認識をお伺いいたします。
(8)利用停止等請求について、データ提供前ならともかく、データを提供しAI学習後に利用停止を求められた場合、学習済みモデルからの情報を完全に除去するなどの技術的対応は極めて困難です。政府は、どのタイミングでの利用停止を想定し、いかにこの権利の実効性を担保する考えか、明確な見解を求めます。
(9)次に、課徴金制度の実効性と体制強化についてです。
悪質な違反行為に対する課徴金制度の導入は、前進として評価いたします。しかしながら、本改正案では、対象が「千人超」の大規模な漏えい事案等に限定されており、金額水準も低いとの懸念の声が上がっております。さらに、悪質なケースでは、同じ個人が事業者名等を変えて規制を逃れ、悪用を繰り返す可能性も考えられます。実効的な抑止力として、本当にこれで十分と言えるのか。海外事業者に対する執行も含め、どのように実効性を高めていくのか見解をお伺いいたします。
(10)加えて、新制度の導入やAI監視の拡大などにより、今後、個人情報保護委員会の業務が激増することは明白です。法規制を整えても、監視・監督体制が脆弱であっては意味がありません。政府として、個人情報保護委員会の人的・技術的リソースをどう抜本強化するのか、その具体策をお示しください。
最後に一言申し上げます。
私たちの目指すべきは、国民からの信頼を礎に、高度な技術と適切なガバナンスによって、データを安全に使いこなし、社会課題の解決と経済成長を成し遂げる社会です。本改正案が、真に国民の権利と命を守り、我が国のデジタル・AI産業が世界で輝くための実効性のある制度となることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
【3270文字】
平戸航太国対副委員長(参議院議員/全国比例)は12日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となったデジタル行政推進法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下のとおり。
「情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律等の一部を改正する法律案」
「個人情報の保護に関する法律等の一部を改正する法律案」
質問原稿
令和8年6月12日
国民民主党・新緑風会
平戸航太
国民民主党・新緑風会の平戸航太です。ただいま議題となりました、情報通信技術を活用した行政の推進等に関する法律等の一部改正案、並びに、個人情報の保護に関する法律等の一部改正案について、会派を代表し、松本大臣に質問いたします。
私は家族のがん闘病を機に、「技術者として、一人でも多くの命を救いたい」と志し、がん治療装置の開発に携わってきました。しかし、かつて世界を牽引した日本のモノづくり産業や技術力は、世界に後れを取っています。技術大国・日本を復活させ、「メイド・イン・ジャパン」の技術やサービスを世界に広げていくことこそ、私が政治家として果たすべき使命です。
データは次世代の経済成長を牽引する原動力です。とりわけ、我が国がAI開発において、国際的な後れを取り戻すためには、円滑なデータ利活用が不可欠です。そして、その前提となるのは、個人の権利利益の保護と、国民の安心と信頼の担保です。
【デジタル行政推進法等改正案について】
激化するグローバルなAI開発競争の中で、我が国のデジタル主権を確立するとともに、自由で安全なデジタル社会の確立に向けて、まずはデジタル行政推進法等改正案について、2点伺います。
(1)第一に、認定審査の迅速化と参入機会確保についてです。
産業界にとってビジネスはスピードが命であり、認定審査の長期化は激しいAI開発競争における致命的な遅れにつながります。迅速な認定手続を求めるとともに、認定を受けた特定の事業者にデータが集中して市場の公平性が損なわれないか、中小企業の参入機会が確保されるのか、という視点が極めて重要です。大企業だけでなく、優れた技術を持つ中小企業やスタートアップが公平にデータにアクセスし、AI開発等に参加できる環境をどう構築するのか、お伺いいたします。
(2)第二に、デジタル庁の司令塔機能の発揮と制度の実効性担保についてです。
本改正案の実効性は、デジタル庁以外の府省庁や自治体の対応に左右されるとの懸念があります。本改正案では、各府省庁には「データの提供を求めることができる」とする一方、自治体に対しては「必要な協力を求めることができる」にとどまり、大幅な裁量が残されています。各機関がデータ提供に消極的になれば、円滑なデータ利活用は進みません。データの開放に向け、デジタル庁が強力な司令塔として各府省庁にどのように横串を通し、消極的な姿勢を打破していくのか。また、対応が未知数とされる自治体に対して、いかに協力とデータ開放を働きかけていくのか、お伺いいたします。
【個人情報保護法等改正案について】
続いて、個人情報保護法等改正案について伺います。
個人情報保護法は、第一条にある通り「個人情報の適正かつ効果的な活用が新たな産業の創出並びに活力ある経済社会及び豊かな国民生活の実現に資するものであることその他の個人情報の有用性に配慮しつつ、個人の権利利益を保護すること」を目的としています。
(3)本改正案は、「規律遵守の実効性確保のための規律」など、個人の権利利益の保護が強化される部分がある一方で、懸念される点もあります。「統計作成等特例」により、AI開発を含む統計作成等が目的であれば、病歴、障がい、健康診断の結果などの要配慮個人情報さえも、本人同意を得ずに第三者に提供できるようになり、個人の権利利益が大きく損なわれる恐れがあります。
衆議院の審議において松本大臣は、提供前に氏名等を一律に削除・仮名化しない理由として、「構造化されていないデータの存在」や「提供元である医療機関等の多大な負担」を挙げ、「ある程度の努力義務にとどめる」「ガイドラインで対応する」旨の答弁をされました。しかし、提供元の負担軽減や開発の利便性を優先するあまり、機微に触れる要配慮個人情報の保護が事業者の「努力義務」や「ガイドライン頼み」に委ねられてしまうのでは、国民の不安は決して払拭されません。本改正案が、個人の権利利益の保護をないがしろにする改正ではないことを示し、国民の不安を取り除くための説明責任があると考えますが、見解をお伺いいたします。
(4)そのうえで、統計作成等特例におけるPETs(プライバシー強化技術)の推進、ならびにデータ仮名化等の必要性について伺います。
AI開発等において個人情報を取得する場合、本人同意を不要とする本特例の創設は、国産AIの育成を後押しする極めて重要な一歩です。
一方で、病歴などの機微な情報を扱う以上、リスクベースの観点が不可欠です。個人特定を防ぐPETsの導入や開発支援を国として推進することは大前提ですが、専門家が指摘するように、AIの出力等から個人情報が推測・復元されるリスクは、完全には排除できません。したがって、データ取得側のPETs導入を推進すると同時に、データ提供側において少なくとも「仮名化」や「匿名化」を原則とすべきではないでしょうか。特に、行政に対する国民の信頼を確保するため、行政機関等が個人情報を提供する場合には「匿名化」すべきだと考えますが、見解をお伺いいたします。
(5)また、本改正案によって、AI開発事業者が、他の個人情報取扱事業者や行政機関などが取得した個人情報および個人関連情報を大量に取得してAI開発を行うことで、個人情報が推測・復元されるリスクが一段と高まることが懸念されます。
取得した個人情報および個人関連情報から個人の特定や分析を禁止するとともに、EUのAI規則を参考に、個人やグループの社会的・経済的脆弱性などにつけこむことや、評価・分類を目的とすることなどを「禁止される行為」として厳格に規制すべきではないでしょうか。見解をお伺いいたします。
(6)次に、子どもの個人情報保護とリテラシー教育の強化についてです。
判断能力の不十分な子どもの「最善の利益」を優先する責務規定が設けられたことは評価いたします。しかし、「16歳未満」とした保護対象は、民法の規定に合わせ、より広く「18歳未満(未成年)」とすべきではないでしょうか、見解をお伺いいたします。
(7)また、不当なプロファイリングやターゲティング広告から子どもを守るためには、法規制だけでなく、社会全体での「リテラシー教育」が不可欠です。文部科学省等と連携し、子どもたちがデジタル社会を生き抜く力を育む教育強化の必要性に対する認識をお伺いいたします。
(8)利用停止等請求について、データ提供前ならともかく、データを提供しAI学習後に利用停止を求められた場合、学習済みモデルからの情報を完全に除去するなどの技術的対応は極めて困難です。政府は、どのタイミングでの利用停止を想定し、いかにこの権利の実効性を担保する考えか、明確な見解を求めます。
(9)次に、課徴金制度の実効性と体制強化についてです。
悪質な違反行為に対する課徴金制度の導入は、前進として評価いたします。しかしながら、本改正案では、対象が「千人超」の大規模な漏えい事案等に限定されており、金額水準も低いとの懸念の声が上がっております。さらに、悪質なケースでは、同じ個人が事業者名等を変えて規制を逃れ、悪用を繰り返す可能性も考えられます。実効的な抑止力として、本当にこれで十分と言えるのか。海外事業者に対する執行も含め、どのように実効性を高めていくのか見解をお伺いいたします。
(10)加えて、新制度の導入やAI監視の拡大などにより、今後、個人情報保護委員会の業務が激増することは明白です。法規制を整えても、監視・監督体制が脆弱であっては意味がありません。政府として、個人情報保護委員会の人的・技術的リソースをどう抜本強化するのか、その具体策をお示しください。
最後に一言申し上げます。
私たちの目指すべきは、国民からの信頼を礎に、高度な技術と適切なガバナンスによって、データを安全に使いこなし、社会課題の解決と経済成長を成し遂げる社会です。本改正案が、真に国民の権利と命を守り、我が国のデジタル・AI産業が世界で輝くための実効性のある制度となることを強く要望いたしまして、私の質問を終わります。
【3270文字】