ASEAN共同体発足10周年、「ASEAN共同体ビジョン2045」の発出、EAS発足20周年という歴史的節目を迎える中、ここマレーシアでのASEAN関連外相会議に参加できることを嬉しく思います。日本は、ASEAN議長国としてマレーシアが掲げる「包摂性と持続可能性」を支持しています。
国際社会の分断と対立が深刻化し、安全保障環境が厳しさを増しています。こうした中、インド太平洋地域の「要」に位置するASEANの役割は、地域全体の平和と繁栄にとって、ますます重要となっています。日本は、ASEAN諸国と「心と心」の繋がる「信頼のパートナー」として、長年にわたり幅広い分野で関係を深めてきました。ASEANにおける代表的な世論調査報告書「State of Southeast Asia」では、日本が調査開始以来7年連続で最も信頼できるパートナーとして選ばれていることを、非常に嬉しく、光栄に思います。
日本にとっても、ASEAN諸国との関係強化は、外交における最優先課題の一つです。アジアの声に耳を傾け、様々な課題解決に向け共に行動するというのが、石破政権の基本姿勢です。
日本は、「ASEAN共同体ビジョン2045」で示された、「強靭で革新的でダイナミックかつ人間中心のASEAN共同体を実現する」という決意を、全面的に支持しています。日本は、最優先課題の一つとして、このビジョンに基づくASEANの更なる統合を後押しする考えです。特に、世界の成長センターであるASEANと共にGreen Transformation(GX)、Digital Transformation(DX)をはじめとする新たな分野における協力を推進し、活力ある未来を共に創っていきたいと考えています。この一環として、アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)構想を通じて、脱炭素・経済成長・エネルギー安全保障を同時に実現していきます。また、東南アジアを拠点とする特殊詐欺によって、多くの国が莫大な経済的被害を被っており、これを含む国際組織犯罪対策も急務です。このような共通の課題への対処に関してもASEAN各国と手を携えて取り組んでいきます。
中東情勢、ロシアによるウクライナ侵略をはじめ、国際社会は大きく揺れ動いています。アジアにおいても、北朝鮮による核・ミサイル開発、東シナ海及び南シナ海における力又は威圧による一方的な現状変更の試みをはじめ、安全保障環境は厳しさと複雑さを増しています。力又は威圧による一方的な現状変更は、世界のどこであれ、決して許されません。自由や法の支配を擁護し、多様性、包摂性、開放性を尊重していくことが重要です。「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」が、開放性、透明性、包摂性、ルールに基づく枠組みといった、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」と共通する原則を掲げていることを大変心強く思います。引き続き、我が国としても、AOIPの主流化に取り組んでまいりたいと思います。
ガザ情勢は未だ解決を見ていません。引き続きの外交努力と更なる支援が国際社会に求められています。こうした中、我が国は、今回、パレスチナ及びマレーシアと共に「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」閣僚級会合を開催します。共催国としてのマレーシアのイニシアティブに敬意を表します。ガザ地区における人道危機への対応と今後の早期復旧・復興ニーズへの対応に当たり、東アジア諸国のリソースや経済発展の知見を活かしたパレスチナ支援の方途を議論します。
こうした取組は、緊密な人と人とのつながりに基づく日マレーシア関係が下支えしています。1月には、石破茂総理大臣が就任後初めての二国間訪問としてマレーシアを訪問し、アンワル首相との間で、安全保障、経済、防災、人材育成の4つの分野で協力を深化していくことで一致しました。また、5月には東南アジアでの脱炭素・エネルギー移行を推進するべく活動する、岸田文雄元総理をはじめとするAZEC議員連盟も訪問しました。
日本は引き続き、マレーシアの「包括的・戦略的パートナー」として、安全保障や経済を含む幅広い分野での二国間協力についても、深化していく考えです。