日・ASEAN外相会議

7.10 (木) 18:40
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令和7年7月10日
舞台の上で手を組んで写真撮影をする日本とASEAN各国の外相
会談を行う日本とASEAN各国の外相

 現地時間7月10日午後2時10分(日本時間同日午後3時10分)から約65分間、マレーシアの首都クアラルンプールにて日・ASEAN外相会議が開催され、岩屋毅外務大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。今回の会議では、岩屋大臣と、対日調整国であるシンガポール共和国のビビアン・バラクリシュナン・シンガポール共和国外務大臣(H.E. Dr. Vivian BALAKRISHNAN, Minister for Foreign Affairs of the Republic of Singapore)が共同議長を務めました。

1 開会挨拶

 岩屋大臣から、概要以下のとおり述べました。

  1. 現在、国際社会は大きな歴史の転換点にあり、地域・国際情勢は厳しさ、不確実性を増している。また、国際貿易をめぐる緊張も高まっており、WTO体制を中核とするルールに基づく、自由で公正な開かれた国際経済秩序の維持・強化が一層必要となっている。
  2. ASEANは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現の「要」であり、世界の成長センター。その役割は、地域全体の平和と繁栄にとり、ますます重要となっている。
  3. 日本は、そのASEANが共同体発足10周年の節目に打ち出した「ASEAN共同体ビジョン2045」を全面的に支持する。引き続き、ASEANの中心性・一体性を尊重しつつ、このビジョンに基づくASEANの更なる統合の努力を支えていく。
  4. 日・ASEAN関係は、50年を超える協力の蓄積を経て、新たな段階に至っている。2023年の「日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議」では、「信頼」と「共創」をキーワードに共同でビジョンを打ち出した。その実施計画のうち、8割以上の項目が既に実施済み又は着手されている。日本は一貫して、ASEAN諸国との関係を強化していく所存である。
  5. 引き続き、GX、DXといった分野を含め、重層的に協力を進めていく。また、地域・国際的な課題、グローバル・ガバナンスにも共に取り組み、未来を創っていきたい。
  6. また、我が国のFOIPと「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」は本質的原則を共有する。国際社会を分断から協調に導いていくため、その主流化と実行に共に取り組んでいきたい。

2 日・ASEAN協力のレビューと将来の方向性

  1. ASEAN側から、2023年の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議で打ち出した共同ビジョン・ステートメント及び実施計画に沿った具体的な協力が着実に進展していることに高い評価と謝意が示されました。さらに、特にDX、GXといった新たな分野を含む経済分野、青年交流を始めとする人的交流、さらに安全保障分野での日本との更なる協力の強化に対する高い期待が示さ れました。
  2. 岩屋大臣からは、各国の発言に謝意を表した上で、共同ビジョン・ステートメントの三つの柱に沿って、幅広い協力が着実に進展していることを、以下のとおり事例を挙げつつ説明しました。
  1. 「世代を超えた心と心のパートナー」
    「文化のWA2.0」の下、今年度末までに計577名以上の「日本語パートナーズ」を派遣予定である。ASEAN元日本留学生評議会(ASCOJA)を通じた元日本留学生の交流、JENESYSを通じた学生・スポーツ交流、「東南アジア青年の船」など青年交流も活発。科学技術協力を推進する事業、「日・ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS)」も開始されている。政府の若手リーダー育成のため、アタッチメント・プログラム修了生を日本の修士課程に受け入れる事業やASEAN事務局職員が日本で研修する事業も開始した。
  2. 「未来の経済・社会を共創するパートナー」
    GXについては、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」を通じ、脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障の同時実現に向け、政策協調も含め、協力を推進したい。DXに関し、「日・ASEANデジタルワークプラン」を通じたデジタルインフラ構築や、日・ASEANサイバーセキュリティ能力構築センターを通じた協力を含め包括的に取組を推進する。OECDの「AI政策ツールキット」にASEAN各国の意見を反映し、政策立案に貢献すべく、「共創ワークショップ」のタイでの開催を支援する。また「日・ASEAN包括的連結性イニシアティブ」の下、交通インフラ、ASEANパワーグリッド構想に資する電力連結性、人的連結性も含め、幅広い分野で連結性強化に貢献していく。防災に関し、ASEAN防災人道支援調整センターへの支援を始め、密接に協力している。2027年にはアジア太平洋防災閣僚会議を仙台で開催予定。この分野でも連携を深めたい。国際貿易に関し、ルールに基づく多角的貿易体制の維持・強化、WTO改革に粘り強く取り組む必要がある。また、ASEAN諸国を含む経済枠組みにはAJCEP、RCEP、CPTPPがあるところ、今後の地域の経済連携強化につき議論を深めたい。
  3. 「平和と安定のパートナー」
    海洋安全保障、特殊詐欺を始めとする国際組織犯罪対策、サイバーセキュリティを重視。各分野で関係当局間の協力を強化したい。地域・国際社会の課題にもASEANと共に取り組んでいきたい。地雷対策ではカンボジアが重要なパートナーであり、ウクライナの地雷対策でもASEANと協力したい。「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」もその一例。明日の閣僚級会合において、深刻なガザ人道危機を踏まえ受けたパレスチナ支援のあり方について、充実した議論を期待している。

3 地域・国際情勢

  1. 地域・国際情勢については、ASEAN側から、南シナ海における航行の自由の重要性や国連海洋法条約に基づく紛争の平和的解決の重要性、朝鮮半島の非核化や拉致問題の解決の重要性、ミャンマー情勢に関するASEANの取組を日本が支持していることへの謝意についての発言がありました。
  2. 岩屋大臣からは、ミャンマー情勢、東シナ海・南シナ海情勢、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応について、我が国の立場を説明しました。

4 閉会挨拶

 岩屋大臣から、以下の点について触れた上で、「信頼のパートナー」として、各国と力を合わせて、日・ASEAN協力の更なる深化に努めていきたい旨述べました。

  1. 幅広い分野で日本とASEANの間の協力が着実に進捗していることを確認することができた。また、地域・国際情勢に関しても有意義な意見交換を行うことができた。
  2. 各国からはグリーンやデジタル分野の協力に高い関心が示された。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、まさにこうした分野の最先端技術を活用した未来社会のデザインを示すもの。是非、訪問いただきたい。
  3. また、日本は、東ティモールのASEAN加盟を以前から支持しており、先般のASEANの決定を歓迎している。日本は、引き続き人材育成を始めとして、東ティモールを支援していく。

令和7年7月10日
舞台の上で手を組んで写真撮影をする日本とASEAN各国の外相
会談を行う日本とASEAN各国の外相

 現地時間7月10日午後2時10分(日本時間同日午後3時10分)から約65分間、マレーシアの首都クアラルンプールにて日・ASEAN外相会議が開催され、岩屋毅外務大臣が出席したところ、概要は以下のとおりです。今回の会議では、岩屋大臣と、対日調整国であるシンガポール共和国のビビアン・バラクリシュナン・シンガポール共和国外務大臣(H.E. Dr. Vivian BALAKRISHNAN, Minister for Foreign Affairs of the Republic of Singapore)が共同議長を務めました。

1 開会挨拶

 岩屋大臣から、概要以下のとおり述べました。

  1. 現在、国際社会は大きな歴史の転換点にあり、地域・国際情勢は厳しさ、不確実性を増している。また、国際貿易をめぐる緊張も高まっており、WTO体制を中核とするルールに基づく、自由で公正な開かれた国際経済秩序の維持・強化が一層必要となっている。
  2. ASEANは、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」実現の「要」であり、世界の成長センター。その役割は、地域全体の平和と繁栄にとり、ますます重要となっている。
  3. 日本は、そのASEANが共同体発足10周年の節目に打ち出した「ASEAN共同体ビジョン2045」を全面的に支持する。引き続き、ASEANの中心性・一体性を尊重しつつ、このビジョンに基づくASEANの更なる統合の努力を支えていく。
  4. 日・ASEAN関係は、50年を超える協力の蓄積を経て、新たな段階に至っている。2023年の「日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議」では、「信頼」と「共創」をキーワードに共同でビジョンを打ち出した。その実施計画のうち、8割以上の項目が既に実施済み又は着手されている。日本は一貫して、ASEAN諸国との関係を強化していく所存である。
  5. 引き続き、GX、DXといった分野を含め、重層的に協力を進めていく。また、地域・国際的な課題、グローバル・ガバナンスにも共に取り組み、未来を創っていきたい。
  6. また、我が国のFOIPと「インド太平洋に関するASEANアウトルック(AOIP)」は本質的原則を共有する。国際社会を分断から協調に導いていくため、その主流化と実行に共に取り組んでいきたい。

2 日・ASEAN協力のレビューと将来の方向性

  1. ASEAN側から、2023年の日本ASEAN友好協力50周年特別首脳会議で打ち出した共同ビジョン・ステートメント及び実施計画に沿った具体的な協力が着実に進展していることに高い評価と謝意が示されました。さらに、特にDX、GXといった新たな分野を含む経済分野、青年交流を始めとする人的交流、さらに安全保障分野での日本との更なる協力の強化に対する高い期待が示さ れました。
  2. 岩屋大臣からは、各国の発言に謝意を表した上で、共同ビジョン・ステートメントの三つの柱に沿って、幅広い協力が着実に進展していることを、以下のとおり事例を挙げつつ説明しました。
  1. 「世代を超えた心と心のパートナー」
    「文化のWA2.0」の下、今年度末までに計577名以上の「日本語パートナーズ」を派遣予定である。ASEAN元日本留学生評議会(ASCOJA)を通じた元日本留学生の交流、JENESYSを通じた学生・スポーツ交流、「東南アジア青年の船」など青年交流も活発。科学技術協力を推進する事業、「日・ASEAN科学技術・イノベーション協働連携事業(NEXUS)」も開始されている。政府の若手リーダー育成のため、アタッチメント・プログラム修了生を日本の修士課程に受け入れる事業やASEAN事務局職員が日本で研修する事業も開始した。
  2. 「未来の経済・社会を共創するパートナー」
    GXについては、「アジア・ゼロエミッション共同体(AZEC)」を通じ、脱炭素化、経済成長、エネルギー安全保障の同時実現に向け、政策協調も含め、協力を推進したい。DXに関し、「日・ASEANデジタルワークプラン」を通じたデジタルインフラ構築や、日・ASEANサイバーセキュリティ能力構築センターを通じた協力を含め包括的に取組を推進する。OECDの「AI政策ツールキット」にASEAN各国の意見を反映し、政策立案に貢献すべく、「共創ワークショップ」のタイでの開催を支援する。また「日・ASEAN包括的連結性イニシアティブ」の下、交通インフラ、ASEANパワーグリッド構想に資する電力連結性、人的連結性も含め、幅広い分野で連結性強化に貢献していく。防災に関し、ASEAN防災人道支援調整センターへの支援を始め、密接に協力している。2027年にはアジア太平洋防災閣僚会議を仙台で開催予定。この分野でも連携を深めたい。国際貿易に関し、ルールに基づく多角的貿易体制の維持・強化、WTO改革に粘り強く取り組む必要がある。また、ASEAN諸国を含む経済枠組みにはAJCEP、RCEP、CPTPPがあるところ、今後の地域の経済連携強化につき議論を深めたい。
  3. 「平和と安定のパートナー」
    海洋安全保障、特殊詐欺を始めとする国際組織犯罪対策、サイバーセキュリティを重視。各分野で関係当局間の協力を強化したい。地域・国際社会の課題にもASEANと共に取り組んでいきたい。地雷対策ではカンボジアが重要なパートナーであり、ウクライナの地雷対策でもASEANと協力したい。「パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)」もその一例。明日の閣僚級会合において、深刻なガザ人道危機を踏まえ受けたパレスチナ支援のあり方について、充実した議論を期待している。

3 地域・国際情勢

  1. 地域・国際情勢については、ASEAN側から、南シナ海における航行の自由の重要性や国連海洋法条約に基づく紛争の平和的解決の重要性、朝鮮半島の非核化や拉致問題の解決の重要性、ミャンマー情勢に関するASEANの取組を日本が支持していることへの謝意についての発言がありました。
  2. 岩屋大臣からは、ミャンマー情勢、東シナ海・南シナ海情勢、核・ミサイル問題や拉致問題を含む北朝鮮への対応について、我が国の立場を説明しました。

4 閉会挨拶

 岩屋大臣から、以下の点について触れた上で、「信頼のパートナー」として、各国と力を合わせて、日・ASEAN協力の更なる深化に努めていきたい旨述べました。

  1. 幅広い分野で日本とASEANの間の協力が着実に進捗していることを確認することができた。また、地域・国際情勢に関しても有意義な意見交換を行うことができた。
  2. 各国からはグリーンやデジタル分野の協力に高い関心が示された。2025年日本国際博覧会(大阪・関西万博)は、まさにこうした分野の最先端技術を活用した未来社会のデザインを示すもの。是非、訪問いただきたい。
  3. また、日本は、東ティモールのASEAN加盟を以前から支持しており、先般のASEANの決定を歓迎している。日本は、引き続き人材育成を始めとして、東ティモールを支援していく。

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