舟山康江参議院議員会長(参議院議員/山形県)は30日、参議院本会議において、食品流通及び取引適正化法及び卸売市場法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
令和7年5月30日
食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案に対する質問
国民民主党・新緑風会
舟山 康江
国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表して、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案について、関係各大臣に質問を致します。
1. 米価高騰の原因と対策
法案自体の問題点や残された課題を質す前に、消費者、そして生産者も含めて国民全員が、小泉新大臣の一挙手一投足に注視している米価高騰対策について質問します。
問題の原因の的確な特定が、有効な対策の実行には不可欠です。3 月の予算委員会以降、何度も指摘していますが、私は昨年夏以降の米価高騰の引き金は、「供給不足」だったと考えます。
これに対して、政府は米価高騰の原因を「流通の目詰まり」の一言で片付けてきましたが、小泉新大臣は、就任前は政府と同じ考えだったのか、また、就任後の現在はどのようなお考えか、まずはお聞かせ下さい。
5月26日の決算委員会で、小泉大臣は、需要があれば、備蓄米の在庫60万トンを全て放出してもよい旨を答弁しましたが、供給量さえ増やせば、米価高騰は解消するという分析をした、つまりは原因を供給不足と特定した上で、既に 31 万トン放出した今もなお、供給不足との認識なのか、併せてお答え下さい。
また小泉大臣が就任後、備蓄米放出の方法を一般競争入札から随意契約へと方針転換した根拠もお聞かせ下さい。
大臣所信では、「米については、消費者に安定した価格で供給」することが農林水産省の使命であると表明されていますが、「安定した価格」とは何を指すのでしょうか?低価格ですか?再生産を考慮した持続可能な価格ですか?小泉大臣、お答え下さい。
一般競争入札から随意契約への変更は、備蓄米放出の目的自体も大きく変えました。当初は、「流通の円滑化により、高騰しすぎた価格を沈静化する」方針だったはずですが、流通経費まで国が負担し、安い価格で直接大手小売りに販売する小泉大臣の手法は、国による価格介入であり、市場をゆがめないのか?併せて、需給バランスが崩れ、価格暴落を招く恐れはないのか?小泉大臣、お聞かせ下さい。
この度の随意契約は、受付開始直後から申し込みが殺到しましたが、当然です。60 ㎏税込み 11,556 円の販売価格は、精米換算すると 5 ㎏ 1,070 円ですから、小売価格 2,000 円でも十分利益が見込まれますので、あまりに好条件ではないかという印象ですが、小泉大臣、この売渡価格の設定根拠も教えて下さい。
本来、不測の事態の最終手段であるべき備蓄米を全て放出するのは、食料安全保障上も問題です。7 年産の備蓄米は当面買入れ禁止との方針も相まって、不測の事態への備えとして機能しなくなりませんか?小泉大臣、よもや、「輸入米を増やせば大丈夫」と思っているわけじゃないですよね?
供給不足の根本的な原因も考える必要があります。
ギリギリの供給量では、不足の発生や懸念が生じると、一気に供給不足となり市場は混乱します。農業は、毎年の自然条件に左右され、工業製品のような計画生産は不可能です。
加えて、かつては食管制度の下、圧倒的な過剰対策として減反政策が強力に進められてきましたが、稲作は、コストを割り込む低米価などの厳しい営農環境を背景に、急激な担い手の減少と高齢化に直面しており、近い将来、米の生産抑制をしなくても需要量が果たして賄えるのか、と私は大いに懸念しています。今回の「低価格誘導策」とも言える大臣のメッセージが、稲作農家の生産意欲減退に拍車をかける懸念はありませんか。今回の事態を教訓に、むしろ増産を後押しする政策に転換すべきではないのか、小泉大臣に伺います。
2. 食料の安定供給と国内生産の重要性
改めて、基本法で謳われている、国内生産の増大を基本に食料の安定供給を図るためには、持続可能な仕組み、すなわち生産者側が再生産できる仕組みが必要であり、それには所得の確保が不可欠です。
これに関して、財務大臣にお聞きします。
大臣の諮問機関「財政制度等審議会」は、昨年 11 月 29 日の「令和 7 年度予算の編成等に関する建議」で、「輸入可能なものは輸入し、ほかの課題に財政余力を」、さらには「食料自給率の向上を目指した国内生産の底上げは・・大きな国民負担」とも述べています。世界の食料需給が不安定化する中、なんとかして国内生産の増大を図ろうとしている折、加藤大臣も審議会の建議と同じ認識なのでしょうか?
「国内生産の増大を基本とする」基本法の方向性を否定、米も足りなくなれば輸入すればいいとお考えでしょうか?
かつてFAO、国連食糧農業機関主催の「世界の食料安全保障に関するハイレベル会合」で、当時の総理自らが、「各国が自らの潜在的な資源を最大限活用して、農業生産を強化することが重要」と表明されています。飢餓人口が最悪のペースで増加する現在、足りなければ輸入すればいい、という財政審の発想は、国際社会の一員としても大問題で、即刻改めるべきだと考えますが、改めて、加藤大臣の見解をお願いします。
3. 合理的な価格のあり方
米にとどまらず、肥料や資材などの生産コスト上昇の一方で、総じて農畜産物価格への転嫁は進まず、経営逼迫を生んでいます。
食料・農業・農村政策審議会の答申でも的確に指摘されているように、「国内の農産物・食品価格はほとんど上昇しないまま推移し」「消費者も低価格な食料を求めるようになる中で安売り競争が常態化し、サプライチェーン全体を通じて食品価格を上げることを敬遠する意識が醸成・固定化」している現状を受け止めて、再生産可能な価格の実現を図る今回の法案は、重要だと考えます。
食品等の持続的な供給に向け、まずは、商慣行の見直しが必要です。例えば、賞味期限のいわゆる「3 分の 1 ルール」や、生鮮品の厳格な規格は、賞味期限前に廃棄されたり、ちょっとしたキズや曲がりで流通に乗らなかったりと、ムダを生んでいます。これがコストアップや食品ロス、環境負荷増大につながっている現実を考えると、早急に見直すべきではないでしょうか。小泉大臣の決断を求めます。
その上で、「適正な価格形成のあり方」を考える必要があります。本法律案では、「指定食料品等」を対象に、「コスト指標」を作成し、取引価格へのコスト転嫁を通じて持続的な供給を図るものだと理解しています。まずは米、野菜、飲用牛乳及び豆腐・納豆を想定しているようですが、コスト指標の公平性・客観性が新たな制度の成否に直結します。地域差や季節的要因、加工方法など、食品特有の諸条件が多岐に混在する中、どのように公平かつ客観的なコスト指標を決定するのか、またそれをどのようなプロセスにより適正な価格設定につなげていくのかを、克服すべき課題も含めて、小泉大臣、分かりやすくお聞かせ下さい。
価格転嫁には課題もあります。海外の競合品よりも割高になれば、消費者が安い輸入品に流れかねません。品質や鮮度の差が現れやすく棲み分けできる生鮮品などとは異なり、今回対象となっている米のほか、小麦、大豆、そばなど、土地利用型の農作物や、長期保存が可能な生乳以外の乳製品の場合、海外との競合に直面しないでしょうか。小泉大臣にお伺いします。
そうなれば、価格低下の圧力にさらされ、生産者の再生産を脅かすことになります。この課題の解決には、政策的に所得を支えることが不可欠であり、これが、直接支払制度です。
かつての民主党政権時の「戸別所得補償制度」は、「標準的な生産費と標準的な販売価格の差を補てんし、再生産を後押しする」ことで、まさしく、「価格は市場で所得は政策で」との基本理念の中、価格に反映されない多面的役割を、政策的に下支えするものでした。
当時、「戸別所得補償で米価が下がる」と大きな批判を呼びましたが、まさに、生産者への
直接支払支援は、消費者利益にも直結し、このことは経済学の分析でも明らかになっていま
す。
再生産可能な所得を確保するには、適正価格に加え、価格には反映されない農業の価値、役割を貨幣で測り、それを直接支援すべきです。
農業生産以外の多面的機能は、全体で約 8 兆円、水田及び畑の洪水防止機能で3.5兆円と評価されており、農地を守ることに対する支援を、生産振興策と切り離して講じることは理にかなっていると思いますが、いかがでしょうか?小泉大臣の見解を求めます。
これこそが、生産者消費者双方にメリットがあり、国土を守る政策であることを強く訴え、質問を終わります。
以上
舟山康江参議院議員会長(参議院議員/山形県)は30日、参議院本会議において、食品流通及び取引適正化法及び卸売市場法改正案に対する質疑を行った。質疑の全文は以下の通り。
令和7年5月30日
食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案に対する質問
国民民主党・新緑風会
舟山 康江
国民民主党・新緑風会の舟山康江です。
会派を代表して、食品等の流通の合理化及び取引の適正化に関する法律及び卸売市場法の一部を改正する法律案について、関係各大臣に質問を致します。
1. 米価高騰の原因と対策
法案自体の問題点や残された課題を質す前に、消費者、そして生産者も含めて国民全員が、小泉新大臣の一挙手一投足に注視している米価高騰対策について質問します。
問題の原因の的確な特定が、有効な対策の実行には不可欠です。3 月の予算委員会以降、何度も指摘していますが、私は昨年夏以降の米価高騰の引き金は、「供給不足」だったと考えます。
これに対して、政府は米価高騰の原因を「流通の目詰まり」の一言で片付けてきましたが、小泉新大臣は、就任前は政府と同じ考えだったのか、また、就任後の現在はどのようなお考えか、まずはお聞かせ下さい。
5月26日の決算委員会で、小泉大臣は、需要があれば、備蓄米の在庫60万トンを全て放出してもよい旨を答弁しましたが、供給量さえ増やせば、米価高騰は解消するという分析をした、つまりは原因を供給不足と特定した上で、既に 31 万トン放出した今もなお、供給不足との認識なのか、併せてお答え下さい。
また小泉大臣が就任後、備蓄米放出の方法を一般競争入札から随意契約へと方針転換した根拠もお聞かせ下さい。
大臣所信では、「米については、消費者に安定した価格で供給」することが農林水産省の使命であると表明されていますが、「安定した価格」とは何を指すのでしょうか?低価格ですか?再生産を考慮した持続可能な価格ですか?小泉大臣、お答え下さい。
一般競争入札から随意契約への変更は、備蓄米放出の目的自体も大きく変えました。当初は、「流通の円滑化により、高騰しすぎた価格を沈静化する」方針だったはずですが、流通経費まで国が負担し、安い価格で直接大手小売りに販売する小泉大臣の手法は、国による価格介入であり、市場をゆがめないのか?併せて、需給バランスが崩れ、価格暴落を招く恐れはないのか?小泉大臣、お聞かせ下さい。
この度の随意契約は、受付開始直後から申し込みが殺到しましたが、当然です。60 ㎏税込み 11,556 円の販売価格は、精米換算すると 5 ㎏ 1,070 円ですから、小売価格 2,000 円でも十分利益が見込まれますので、あまりに好条件ではないかという印象ですが、小泉大臣、この売渡価格の設定根拠も教えて下さい。
本来、不測の事態の最終手段であるべき備蓄米を全て放出するのは、食料安全保障上も問題です。7 年産の備蓄米は当面買入れ禁止との方針も相まって、不測の事態への備えとして機能しなくなりませんか?小泉大臣、よもや、「輸入米を増やせば大丈夫」と思っているわけじゃないですよね?
供給不足の根本的な原因も考える必要があります。
ギリギリの供給量では、不足の発生や懸念が生じると、一気に供給不足となり市場は混乱します。農業は、毎年の自然条件に左右され、工業製品のような計画生産は不可能です。
加えて、かつては食管制度の下、圧倒的な過剰対策として減反政策が強力に進められてきましたが、稲作は、コストを割り込む低米価などの厳しい営農環境を背景に、急激な担い手の減少と高齢化に直面しており、近い将来、米の生産抑制をしなくても需要量が果たして賄えるのか、と私は大いに懸念しています。今回の「低価格誘導策」とも言える大臣のメッセージが、稲作農家の生産意欲減退に拍車をかける懸念はありませんか。今回の事態を教訓に、むしろ増産を後押しする政策に転換すべきではないのか、小泉大臣に伺います。
2. 食料の安定供給と国内生産の重要性
改めて、基本法で謳われている、国内生産の増大を基本に食料の安定供給を図るためには、持続可能な仕組み、すなわち生産者側が再生産できる仕組みが必要であり、それには所得の確保が不可欠です。
これに関して、財務大臣にお聞きします。
大臣の諮問機関「財政制度等審議会」は、昨年 11 月 29 日の「令和 7 年度予算の編成等に関する建議」で、「輸入可能なものは輸入し、ほかの課題に財政余力を」、さらには「食料自給率の向上を目指した国内生産の底上げは・・大きな国民負担」とも述べています。世界の食料需給が不安定化する中、なんとかして国内生産の増大を図ろうとしている折、加藤大臣も審議会の建議と同じ認識なのでしょうか?
「国内生産の増大を基本とする」基本法の方向性を否定、米も足りなくなれば輸入すればいいとお考えでしょうか?
かつてFAO、国連食糧農業機関主催の「世界の食料安全保障に関するハイレベル会合」で、当時の総理自らが、「各国が自らの潜在的な資源を最大限活用して、農業生産を強化することが重要」と表明されています。飢餓人口が最悪のペースで増加する現在、足りなければ輸入すればいい、という財政審の発想は、国際社会の一員としても大問題で、即刻改めるべきだと考えますが、改めて、加藤大臣の見解をお願いします。
3. 合理的な価格のあり方
米にとどまらず、肥料や資材などの生産コスト上昇の一方で、総じて農畜産物価格への転嫁は進まず、経営逼迫を生んでいます。
食料・農業・農村政策審議会の答申でも的確に指摘されているように、「国内の農産物・食品価格はほとんど上昇しないまま推移し」「消費者も低価格な食料を求めるようになる中で安売り競争が常態化し、サプライチェーン全体を通じて食品価格を上げることを敬遠する意識が醸成・固定化」している現状を受け止めて、再生産可能な価格の実現を図る今回の法案は、重要だと考えます。
食品等の持続的な供給に向け、まずは、商慣行の見直しが必要です。例えば、賞味期限のいわゆる「3 分の 1 ルール」や、生鮮品の厳格な規格は、賞味期限前に廃棄されたり、ちょっとしたキズや曲がりで流通に乗らなかったりと、ムダを生んでいます。これがコストアップや食品ロス、環境負荷増大につながっている現実を考えると、早急に見直すべきではないでしょうか。小泉大臣の決断を求めます。
その上で、「適正な価格形成のあり方」を考える必要があります。本法律案では、「指定食料品等」を対象に、「コスト指標」を作成し、取引価格へのコスト転嫁を通じて持続的な供給を図るものだと理解しています。まずは米、野菜、飲用牛乳及び豆腐・納豆を想定しているようですが、コスト指標の公平性・客観性が新たな制度の成否に直結します。地域差や季節的要因、加工方法など、食品特有の諸条件が多岐に混在する中、どのように公平かつ客観的なコスト指標を決定するのか、またそれをどのようなプロセスにより適正な価格設定につなげていくのかを、克服すべき課題も含めて、小泉大臣、分かりやすくお聞かせ下さい。
価格転嫁には課題もあります。海外の競合品よりも割高になれば、消費者が安い輸入品に流れかねません。品質や鮮度の差が現れやすく棲み分けできる生鮮品などとは異なり、今回対象となっている米のほか、小麦、大豆、そばなど、土地利用型の農作物や、長期保存が可能な生乳以外の乳製品の場合、海外との競合に直面しないでしょうか。小泉大臣にお伺いします。
そうなれば、価格低下の圧力にさらされ、生産者の再生産を脅かすことになります。この課題の解決には、政策的に所得を支えることが不可欠であり、これが、直接支払制度です。
かつての民主党政権時の「戸別所得補償制度」は、「標準的な生産費と標準的な販売価格の差を補てんし、再生産を後押しする」ことで、まさしく、「価格は市場で所得は政策で」との基本理念の中、価格に反映されない多面的役割を、政策的に下支えするものでした。
当時、「戸別所得補償で米価が下がる」と大きな批判を呼びましたが、まさに、生産者への
直接支払支援は、消費者利益にも直結し、このことは経済学の分析でも明らかになっていま
す。
再生産可能な所得を確保するには、適正価格に加え、価格には反映されない農業の価値、役割を貨幣で測り、それを直接支援すべきです。
農業生産以外の多面的機能は、全体で約 8 兆円、水田及び畑の洪水防止機能で3.5兆円と評価されており、農地を守ることに対する支援を、生産振興策と切り離して講じることは理にかなっていると思いますが、いかがでしょうか?小泉大臣の見解を求めます。
これこそが、生産者消費者双方にメリットがあり、国土を守る政策であることを強く訴え、質問を終わります。
以上