昨日から2日間にわたりまして、ASEAN関連外相会議に出席しました。一連の会合におきまして、日本とASEANが引き続き信頼のパートナーとして、関係強化に取り組んでいくことを確認しました。また、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進を通じ、国際社会を分断と対立ではなく、対話と協調に導いていくとのメッセージを発信したところでございます。
さらに、拉致問題を含む北朝鮮の問題、東シナ海・南シナ海を含む地域情勢に関しまして、我が国の立場を力強く発信し、各国との連携を確認いたしました。ミャンマー情勢につきましては、停戦の確実な履行や、当事者間の真摯な対話の進展を促したところでございます。
この機会を捉えまして、日メコン外相会議を開催しました。防災や、越境犯罪対策を始め、日メコン協力を一層進化させていくことを確認いたしました。加えて、パレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)閣僚級会合も開催し、パレスチナ支援のために、アジアの知見を生かしていくことを確認いたしました。 また、この機会を利用いたしまして、米国、中国、ニュージーランド、ASEAN7か国及びパレスチナと会談を行うとともに、日米比外相会合、日米韓外相会合を開催したところでございます。
米国のルビオ国務長官に対しましては、米国が我が国に対する関税率の引き上げを発表したことに対して遺憾の意を伝え、日本の立場を伝えたところでございます。その上で、関税の上乗せ分の適用が、8月1日まで延長されたことも踏まえまして、日米双方にとって利益となる合意の実現に向けた、担当閣僚間の協議を引き続き後押ししていくということを確認いたしました。
また、日中外相会談では、両国の間に課題が残っている中でも、意思疎通を強化し、日中関係を前に進めていくことを確認いたしました。日本産牛肉の対中輸出再開に向けましては、今般の会談を受けて、本日まさに、関連の協定が発効するに至ったところです。これを歓迎したいと思います。
加えて、今回の日米比外相会合は、ルビオ長官及びラザロ外相との間で行う初めての会合でございました。両外相との間で、これまでの3カ国協力のモメンタムを継続・強化して、安全保障、インフラ強靱化を含む幅広い分野で連携を深めていくことを確認したところでございます。
さらに、日米韓外相会合では、我々を取り巻く戦略環境が厳しさを増す中で、日米韓が引き続き、結束を強化して、北朝鮮問題への対応を始めとして、地域の安定と繁栄を追求していくことで一致いたしました。拉致問題の即時解決に対する、米韓両国政府からの支持も再確認をしたところでございます。
今回の出張は、同盟国や同志国との連携を強化し、法の支配に基づく「自由で開かれたインド太平洋」、そして、「対話と協調の外交」を推進する上で、大変意義深いものになったと考えているところでございます。
冒頭発言
質疑応答
国際貿易をめぐる日ASEAN協力
(記者)今回のASEANの一連の外相会議ですけれども、アメリカの関税措置の対応に各国の関心が高まる中での開催となったと思います。自由貿易の推進という点から今回の一連の会議の意義を、大臣としてはどのようにお考えでしょうか。今後、日本として、アメリカとの交渉をどのように進めていくのか、また、ASEAN各国との通商面での連携を具体的にどう進めていくのか、この点についてのお考えをお聞かせください。
(大臣)国際貿易を巡る緊張が高まっている中で、今般のASEAN関連外相会議では、ASEAN諸国を含む多くの国との間で、WTO体制を中核とするルールに基づく自由で公正な開かれた国際経済秩序の維持、そして強化の重要性を確認することができたと思います。米国の関税措置そのものに直接議論が集中したわけではありませんけれども、WTO体制を中核とする自由貿易体制の重要性ということについては、幅広く、共有され、確認をすることができたと思っております。
米国のルビオ国務長官に対しましては、先ほど申し上げたとおり、関税率の引き上げ発表に対する我が国の立場を伝えた上で、8月1日まで上乗せ分の適用が延長されたことも踏まえまして、日米双方にとって利益となる合意の実現に向けて引き続き担当閣僚間の協議を、しっかり国務省としても、外務省としても、全力で後押ししていこうということを確認したところでございます。
また、ASEAN諸国との経済連携に関しましては、日本とASEAN諸国が共に参加しております多国間の経済連携の枠組みがございます。日ASEAN包括的経済連携協定(AJCEP)ですとか、RCEP、それからCPTPPなどがございます。こうした枠組みの更なる推進を含めて、日本とASEANは、経済関係の更なる強化に向けて取り組んでいくということを確認したところでございます。
日中外相会談
(記者)日中関係について伺います。日本産水産物の中国による輸入規制を巡って、6月の下旬に一部輸入の再開が中国から発表されました。前向きな対応が見られますが、残る10都県の水産物の規制や食品全体の規制で、今回の外相会談で何か進展が見られたでしょうか。また牛肉の規制は、先ほど御紹介あったように、本日、関連する協定が発効しました。改めまして受け止めと、発効時期、実際に輸入が始まるまでのこの先の展望、見通しを御紹介ください。また邦人の拘束の問題について、外相会談で提起をしたというふうに発表していただいたのですが、アステラス製薬の日本人の方が拘束されていて、判決公判というのが16日に入ったという情報があります。王毅外相との会談で、判決期日というものを踏まえた、何か提起をしたのかどうか、またどういったことを求めたのか改めて御紹介ください。また、安全保障面で、中国軍機の至近距離接近がこのところ相次いでいますけれども、両国間でこの難しい安全保障の対立というのをどのようにコントロールするお考えか教えてください。
(大臣)今お尋ねの件は全部取り上げました。会談においてですね。昨日の会談で、私から王毅部長に対しまして、まず御指摘の10都県産の食品の輸入規制の早期撤廃、それから日本産牛肉の対中輸出の再開、邦人拘束事案、度重なる中国軍機による自衛隊機への接近事案を始めとする安全保障に関する問題についても提起し、中国側の対応を強く求めたところでございます。
このうち、中国による日本産水産物の輸入規制について、先月29日に中国当局が輸入再開を正式に発表して、本11日、中国当局が日本の輸出関連施設の再登録を開始したと承知をしております。引き続き、残された10都県産の水産物の輸入規制の撤廃も、中国側に今後とも強く求めてまいります。
そして、冒頭に申し上げた日本産牛肉の対中輸出再開については、昨日の会談を踏まえまして、本日まさに関連の協定が発効したところでございますが、これは24年ぶりの再開に向けた重要な節目と受け止めております。本協定の発効を踏まえまして、これから輸出再開の早期実現に向けて、中国との間で関連の協議を引き続き推進してまいります。協定の発効を踏まえて、これから具体的な手続きについての協議をしっかり進めていきたいと思っております。この段階で、いつになったらっていうことをまだ明言できませんが、その作業を急いでいきたいと考えております。
また、会談ではお尋ねのあった16日に判決公判が行われることになった方を含めて、拘束されている5人の邦人の方々の早期釈放を強く求めたところです。政府としては、これら邦人の方々に対して、今後とも邦人保護の観点からできる限りの支援を行ってまいります。
そして、安全保障に関する問題につきましては、意思疎通を深めていくために、日中安保対話の早期開催に向けて調整していくことを改めて確認をいたしました。せっかくホットラインも作っているわけですから、もう少し防衛当局間での対話もしっかり進めていってもらうことが必要だと思いますし、外務省としても、それをしっかり後押しをしていきたいと考えております。
今後とも、対話によって、課題と懸案を一つずつ減らしていく、協力と連携ができることを一つずつ増やしていくと、その方針でしっかり努力を重ねていきたいと考えております。