竹詰仁副幹事長(参議院議員/全国比例)は11日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった令和5年度決算案2件に反対、内閣への警告決議には賛成の討論を行った。討論の全文は以下のとおり。
令和7年6月11日
国民民主党・新緑風会
竹詰仁
参議院本会議 令和5年度決算案外2件へ反対討論及び内閣への警告決議へ賛成討論
国民民主党・新緑風会の竹詰ひとしです。
会派を代表して、ただいま議題となりました、令和5年度決算案外2件に全て反対、内閣への警告決議に賛成の立場で討論をいたします。
まず、我が会派は令和5年度予算案に対し、我が国は長期にわたり停滞する経済、止まらない少子化傾向という深刻な問題に直面しているにも関わらず、給料が上がる経済に資する予算、人づくりに資する子ども・子育て政策関連の予算編成がなされていない ことなどを指摘し、反対いたしました。
実際、令和5年度には何が生じたのか、また決算からみて何が問題だったのかを指摘し、反対の討論をいたします。
初めに、自民党のいわゆる裏金問題が大きく報道され、大問題となっていったのが令和5年11月です。その後、国会においても数えきれない議論が行われましたが、今でも裏金問題の全容が明らかになっていません。今国会では衆参両院において政治倫理審査会での審査が行われましたが、審査を受けた自民党議員からの弁明は人により食い違っており理解納得ができるものではありません。国民から政治不信を招いた与党・自民党の責任は極めて重いことを指摘しておきます。
次に賃金について、厚労省の統計から令和5年度の実質賃金は前年度比マイナス2.2%と2014年度のマイナス2.9%以来9年ぶりにマイナス2%を超える実質賃金の低下幅となりました。また、翌令和6年度の実質賃金もマイナス0.5%となり、実質賃金の低下を招いた令和5年度決算には到底賛成することはできません。
こども家庭庁が発足したのが令和5年4月1日です。岸田総理は令和5年度予算において「異次元の少子化対策」という表現を用いて、従来の少子化対策とは異なる規模や内容の施策を進めるとしました。しかし、出生数、合計特殊出生率とも低下をし続け、未だに少子化の歯止めができておらず、異次元の少子化対策は成果が表れておりません。
インボイス制度は令和5年10 月1日に始まりました。国民民主党のみならず野党会派は反対し、中小規模事業者や個人事業主、フリーランス事業者からも多くの反対があったにも関わらずインボイス制度を導入しました。インボイス制度の負担は今でも大きく、制度の廃止を求めます。
コロナにおける燃料油価格激変緩和対策事業としてガソリン・軽油・灯油・重油価格の補助が始まったのは令和4年1月でした。令和5年度においても燃料油価格激変緩和補助金は継続されました。国民民主党は、補助金よりも減税の方が無駄が少なく賃上げの後押しにつながるため、トリガー条項凍結解除を申し入れましたが、政府は受け入れませんでした。令和5年度補正予算案に国民民主党は賛成しました。これは、岸田総理がトリガー条項凍結解除の検討を行うことを明言したからです。党内では補正予算への賛否について喧々諤々の議論がありましたが、トリガーに期待して賛成しました。しかし、その期待は裏切られました。そうした決算を承認できるはずがありません。先月から燃料油価格定額引下げ措置が開始されましたが、国民民主党はガソリン暫定税率の廃止を強く求めるものであります。
電気代・ガス代の補助金制度は令和5年1月から開始されました。令和5年度中も補助が続きました。この際国民民主党は、電気代の負担軽減は負担が増え続けてきた再エネ賦課金の一時徴収停止を求め、議員立法も提出しました。今年度の再エネ賦課金の単価は1kWhにつき3.98円、約4円です。標準的な電気の使用家庭で、再エネ賦課金だけで年間2万円の負担です。今の仕組みでは益々再エネ賦課金は上昇します。電気代補助ではなく再エネ賦課金を一旦徴収停止し、制度の見直しを強く求めます。
新型コロナウイルス感染症は令和5年5月8日に2類から5類感染症へ移行しました。これにより、季節性インフルエンザと同じ扱いとなりました。新型コロナ発症の時の初期対応やその後の感染対応、保健所・医療体制、国及び自治体による支援、そして財政的な措置およびその使用など網羅的に総括してこそ、新たなウイルス、感染症対策が講じられます。その総括ができておりません。政府には網羅的かつ明瞭な総括をし、国民にもしっかり伝えることを求めます。
政府は、令和4年12月に策定した防衛力整備計画において、令和5~9年度の5年間における防衛力整備の水準額を43兆円程度としました。財源確保については、5年間の歳出追加需要14.6兆円に対し、①歳出改革により3兆円強、②決算剰余金の活用 により3.5兆円程度、③防衛財源確保法に基づく防衛力強化資金により4.6~5兆円強、④残りを税制措置、すなわち防衛特別法人税やたばこ税の見直し、により確保するとしていました。しかし、防衛財源に充当する決算剰余金は、令和4年度の1.3兆円に対し、令和5年度は0.4兆円と大幅に減少し、果たして防衛力整備の財源確保策は妥当で あるのか疑問が生じるとともに、防衛力整備計画自体にも影響が生じかねないことを指 摘しておきます。
「人づくりこそ国づくり」、その指標の一つが科学技術予算です。科学技術の発展は天然資源に乏しいわが国の成長の重要な要素です。一例として、わが国の大学の研究開発費については、2000年と比べると増えるどころか、若干減少しています。一方、OECD購買力平均換算で、米国は2000年と直近と比較して約2倍、中国では約12倍です。こうした差がわが国の経済が低迷してきた一因でもあります。科学技術への予算増ととも に、研究者の増加は喫緊且つ重要な課題として政府に対応を求めます。
官民ファンドは非常に問題です。先月、会計検査院から「官民ファンドの業務運営状況の会計検査結果」も提出されました。令和5年度末時点で官民ファンドは14ファンドあり、政府出資は2兆1,137億円に上るのに対して民間出資は8,950億円で、そのうち8,190億円は政府系金融機関である日本政策投資銀行による出資であるため、純粋な民間出資は660億円です。97%が政府出資、わずか3%が民間出資です。しかも、政府出資比率が高いファンドの累積赤字が巨額であり、今後の損失解消の見通しも不明で、 損失に対する責任も不明確です。こうした決算は国民の納得が得られるものではありま せん。
本年1月、埼玉県八潮市において下水道管の破損に起因すると考えられる陥没が起き、トラック1台が巻き込まれるとともに、約120万人に下水道の使用自粛が求められるなど大きな影響が生じました。この箇所は埼玉県が令和3年に独自に行っていた点検では「直ちに工事は必要ない」と判断されていました。一方で令和4年度には、全国で下水道管路施設の老朽化等に起因する道路陥没事故は2,607件発生していたにも関わらず、令和5年度以降においても適切な対応は行われなかったと言わざるを得ません。地方公共団体における下水道施設の老朽化対策や維持更新の計画的な実施について、政府主導での対策を切に求めます。
就職氷河期世代への支援については、政府の施策が十分な効果を発揮できていないことを指摘せざるをません。政府の対策が雇用対策に偏りすぎていたうえに、当事者のニーズを的確にとらえていないのではないでしょうか。我が党から、本決算審査にあたり、会計検査院に対し就職氷河期世代支援について検査要請を行いました。検査が実施されることには評価するとともに、より有効な施策につなげていくことを求めます。
最後に、会計検査院の令和5年度決算検査報告では、指摘事項が338件、指摘金額は648億円超ありました。前年からの指摘に対する是正には至らず、逆に指摘事項は5件増え、指摘金額も約68億円増えました。指摘件数多数、指摘金額は巨額であり、こうした決算は納税者からの理解納得を得られるものではありません。
以上、「令和5年度決算」に対する反対の理由を述べましたが、決算の参議院、出口の参議院と言われるように、我々は決算を厳正にチェックし、次なる予算、政策にしっかりとつなげていく重要な役割があります。政府与党の皆さまには今一度何が問題かということを真摯に謙虚にしっかりと受け止めていただきたいと思います。
国民民主党は「給料を上げる経済の実現」「自分の国は自分で守る」「人づくりこそ国づくり」「正直な政治を貫く」4本柱の政策をつくり、訴え、そして国民の「手取りを増やす」ことを実現するため全力を尽くすことをお約束し、令和5年度決算の反対討論とします。ご清聴ありがとうございました。
以上
竹詰仁副幹事長(参議院議員/全国比例)は11日、国民民主党を代表し、参議院本会議で議題となった令和5年度決算案2件に反対、内閣への警告決議には賛成の討論を行った。討論の全文は以下のとおり。
令和7年6月11日
国民民主党・新緑風会
竹詰仁
参議院本会議 令和5年度決算案外2件へ反対討論及び内閣への警告決議へ賛成討論
国民民主党・新緑風会の竹詰ひとしです。
会派を代表して、ただいま議題となりました、令和5年度決算案外2件に全て反対、内閣への警告決議に賛成の立場で討論をいたします。
まず、我が会派は令和5年度予算案に対し、我が国は長期にわたり停滞する経済、止まらない少子化傾向という深刻な問題に直面しているにも関わらず、給料が上がる経済に資する予算、人づくりに資する子ども・子育て政策関連の予算編成がなされていない ことなどを指摘し、反対いたしました。
実際、令和5年度には何が生じたのか、また決算からみて何が問題だったのかを指摘し、反対の討論をいたします。
初めに、自民党のいわゆる裏金問題が大きく報道され、大問題となっていったのが令和5年11月です。その後、国会においても数えきれない議論が行われましたが、今でも裏金問題の全容が明らかになっていません。今国会では衆参両院において政治倫理審査会での審査が行われましたが、審査を受けた自民党議員からの弁明は人により食い違っており理解納得ができるものではありません。国民から政治不信を招いた与党・自民党の責任は極めて重いことを指摘しておきます。
次に賃金について、厚労省の統計から令和5年度の実質賃金は前年度比マイナス2.2%と2014年度のマイナス2.9%以来9年ぶりにマイナス2%を超える実質賃金の低下幅となりました。また、翌令和6年度の実質賃金もマイナス0.5%となり、実質賃金の低下を招いた令和5年度決算には到底賛成することはできません。
こども家庭庁が発足したのが令和5年4月1日です。岸田総理は令和5年度予算において「異次元の少子化対策」という表現を用いて、従来の少子化対策とは異なる規模や内容の施策を進めるとしました。しかし、出生数、合計特殊出生率とも低下をし続け、未だに少子化の歯止めができておらず、異次元の少子化対策は成果が表れておりません。
インボイス制度は令和5年10 月1日に始まりました。国民民主党のみならず野党会派は反対し、中小規模事業者や個人事業主、フリーランス事業者からも多くの反対があったにも関わらずインボイス制度を導入しました。インボイス制度の負担は今でも大きく、制度の廃止を求めます。
コロナにおける燃料油価格激変緩和対策事業としてガソリン・軽油・灯油・重油価格の補助が始まったのは令和4年1月でした。令和5年度においても燃料油価格激変緩和補助金は継続されました。国民民主党は、補助金よりも減税の方が無駄が少なく賃上げの後押しにつながるため、トリガー条項凍結解除を申し入れましたが、政府は受け入れませんでした。令和5年度補正予算案に国民民主党は賛成しました。これは、岸田総理がトリガー条項凍結解除の検討を行うことを明言したからです。党内では補正予算への賛否について喧々諤々の議論がありましたが、トリガーに期待して賛成しました。しかし、その期待は裏切られました。そうした決算を承認できるはずがありません。先月から燃料油価格定額引下げ措置が開始されましたが、国民民主党はガソリン暫定税率の廃止を強く求めるものであります。
電気代・ガス代の補助金制度は令和5年1月から開始されました。令和5年度中も補助が続きました。この際国民民主党は、電気代の負担軽減は負担が増え続けてきた再エネ賦課金の一時徴収停止を求め、議員立法も提出しました。今年度の再エネ賦課金の単価は1kWhにつき3.98円、約4円です。標準的な電気の使用家庭で、再エネ賦課金だけで年間2万円の負担です。今の仕組みでは益々再エネ賦課金は上昇します。電気代補助ではなく再エネ賦課金を一旦徴収停止し、制度の見直しを強く求めます。
新型コロナウイルス感染症は令和5年5月8日に2類から5類感染症へ移行しました。これにより、季節性インフルエンザと同じ扱いとなりました。新型コロナ発症の時の初期対応やその後の感染対応、保健所・医療体制、国及び自治体による支援、そして財政的な措置およびその使用など網羅的に総括してこそ、新たなウイルス、感染症対策が講じられます。その総括ができておりません。政府には網羅的かつ明瞭な総括をし、国民にもしっかり伝えることを求めます。
政府は、令和4年12月に策定した防衛力整備計画において、令和5~9年度の5年間における防衛力整備の水準額を43兆円程度としました。財源確保については、5年間の歳出追加需要14.6兆円に対し、①歳出改革により3兆円強、②決算剰余金の活用 により3.5兆円程度、③防衛財源確保法に基づく防衛力強化資金により4.6~5兆円強、④残りを税制措置、すなわち防衛特別法人税やたばこ税の見直し、により確保するとしていました。しかし、防衛財源に充当する決算剰余金は、令和4年度の1.3兆円に対し、令和5年度は0.4兆円と大幅に減少し、果たして防衛力整備の財源確保策は妥当で あるのか疑問が生じるとともに、防衛力整備計画自体にも影響が生じかねないことを指 摘しておきます。
「人づくりこそ国づくり」、その指標の一つが科学技術予算です。科学技術の発展は天然資源に乏しいわが国の成長の重要な要素です。一例として、わが国の大学の研究開発費については、2000年と比べると増えるどころか、若干減少しています。一方、OECD購買力平均換算で、米国は2000年と直近と比較して約2倍、中国では約12倍です。こうした差がわが国の経済が低迷してきた一因でもあります。科学技術への予算増ととも に、研究者の増加は喫緊且つ重要な課題として政府に対応を求めます。
官民ファンドは非常に問題です。先月、会計検査院から「官民ファンドの業務運営状況の会計検査結果」も提出されました。令和5年度末時点で官民ファンドは14ファンドあり、政府出資は2兆1,137億円に上るのに対して民間出資は8,950億円で、そのうち8,190億円は政府系金融機関である日本政策投資銀行による出資であるため、純粋な民間出資は660億円です。97%が政府出資、わずか3%が民間出資です。しかも、政府出資比率が高いファンドの累積赤字が巨額であり、今後の損失解消の見通しも不明で、 損失に対する責任も不明確です。こうした決算は国民の納得が得られるものではありま せん。
本年1月、埼玉県八潮市において下水道管の破損に起因すると考えられる陥没が起き、トラック1台が巻き込まれるとともに、約120万人に下水道の使用自粛が求められるなど大きな影響が生じました。この箇所は埼玉県が令和3年に独自に行っていた点検では「直ちに工事は必要ない」と判断されていました。一方で令和4年度には、全国で下水道管路施設の老朽化等に起因する道路陥没事故は2,607件発生していたにも関わらず、令和5年度以降においても適切な対応は行われなかったと言わざるを得ません。地方公共団体における下水道施設の老朽化対策や維持更新の計画的な実施について、政府主導での対策を切に求めます。
就職氷河期世代への支援については、政府の施策が十分な効果を発揮できていないことを指摘せざるをません。政府の対策が雇用対策に偏りすぎていたうえに、当事者のニーズを的確にとらえていないのではないでしょうか。我が党から、本決算審査にあたり、会計検査院に対し就職氷河期世代支援について検査要請を行いました。検査が実施されることには評価するとともに、より有効な施策につなげていくことを求めます。
最後に、会計検査院の令和5年度決算検査報告では、指摘事項が338件、指摘金額は648億円超ありました。前年からの指摘に対する是正には至らず、逆に指摘事項は5件増え、指摘金額も約68億円増えました。指摘件数多数、指摘金額は巨額であり、こうした決算は納税者からの理解納得を得られるものではありません。
以上、「令和5年度決算」に対する反対の理由を述べましたが、決算の参議院、出口の参議院と言われるように、我々は決算を厳正にチェックし、次なる予算、政策にしっかりとつなげていく重要な役割があります。政府与党の皆さまには今一度何が問題かということを真摯に謙虚にしっかりと受け止めていただきたいと思います。
国民民主党は「給料を上げる経済の実現」「自分の国は自分で守る」「人づくりこそ国づくり」「正直な政治を貫く」4本柱の政策をつくり、訴え、そして国民の「手取りを増やす」ことを実現するため全力を尽くすことをお約束し、令和5年度決算の反対討論とします。ご清聴ありがとうございました。
以上