【岩屋外務大臣】冒頭、私(岩屋大臣)から、四つ報告がございます。
まず、ASEANの関連外相会議への出席についてです。
私(岩屋大臣)は、明日からASEAN関連外相会議に出席するために、マレーシアを訪問いたします。
一連の会議を通じまして、信頼のパートナーとして日本とASEANとの関係強化に、引き続き、取り組んでまいりたいと思います。
また、「自由で開かれたインド太平洋(FOIP)」の推進を通じまして、地域を分断と対立ではなく、対話と協調に導いていくというメッセージをしっかり発信していきたいと思います。
さらに、この機会を捉えまして、日・メコン外相会議、それからパレスチナ開発のための東アジア協力促進会合(CEAPAD)、閣僚級会合を開催いたします。メコン地域の発展や、アジアの知見を生かしたパレスチナ支援のために、各国との連携を深めてまいりたいと考えております。
冒頭発言
(1)ASEAN関連外相会議出席
(2)アナンド・カナダ外務大臣による訪日
【岩屋外務大臣】2番目は、アナンド・カナダ外務大臣による訪日についてです。
本日から7月9日まで、カナダのアナンド外務大臣が訪日されます。
本日、情報保護協定の署名を始め、二国間協力、国際情勢などの幅広い分野について意見交換を行い、日・カナダ戦略的パートナーシップを更に強化していきたいと考えております。
(3)外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた取組
【岩屋外務大臣】それから、三つ目ですが、外国人問題に対する司令塔組織の設置についてです。
本日、在留外国人による様々な課題問題への対応のために、政府内に新たな司令塔組織を設置する方針が発表されました。その一員である外務省の取組について、紹介をしたいと思います。
外務省では、自民党の「外国人との秩序ある共生社会実現に関する特命委員会」による提言も踏まえまして、関係省庁とも連携しつつ、国民の安心・安全を確保するために、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けた取組を強化してきております。
まず、来日前の外国人に対しては、査証審査を厳格に実施することは言うまでもありません。加えて、不法滞在や犯罪検挙件数の多い国の政府に対しましては、外相会談の機会も活用して、懸念の表明や対策実施の要請を行ってきております。
また、日本に滞在している外国人につきましても、出身国の在京大使館を通じ、不法滞在、不法就労や生活マナー違反に関して、幅広く注意喚起を行ってきております。
その上で、警察などとも連携の上で、国内で犯罪を行った外国人が、万が一、そのまま出国をしてしまった場合でも、外国政府による処罰を申し入れております。また、出入国在留管理庁と連携をいたしまして、不法滞在者の強制送還の実施に向けた相手国政府との調整を加速化するなど、問題解決に向けて、厳格な姿勢で臨んでいるところです。
なお、長期的な取組といたしましては、国際交流基金を通じた来日前の外国人に対する日本語教育環境の整備、国際移住機関などと連携した啓発活動、JICAとの連携による外国人・日本人の双方が、共生社会の担い手となるような仕組み作りに取り組んでおります。
引き続き、石破総理の指示の下で、国民の皆様の安心・安全を確保をするために、外国人との秩序ある共生社会の実現に向けて、外務省としても、積極的に役割を出してまいりたいと思います。
(4)7月14日付け幹部人事
【岩屋外務大臣】そして4番目ですが、7月14日付の幹部人事についてです。
本日の閣議で、外務省の幹部人事が承認されました。7月14日付で発令する予定です。
市川恵一(いちかわ・けいいち)内閣官房副長官補を兼ねて、国家安全保障局次長は、外務省に戻りまして、大臣官房付となります。後任として、河邉賢裕(こうべ・やすひろ)を外務省総合外交政策局長が就任すると承知しております。
そして、河邉局長の後任には、有馬裕(ありま・ゆたか)北米局長に就任してもらいます。その後任には、北米局を担当してきた熊谷直樹(くまがい・なおき)大臣官房審議官を充てます。
国際情勢が日々激動している中、この新たな体制の下で、引き続き一丸となって、幅広い外交課題に全力で取り組んでまいりたいと思います。
冒頭、私(岩屋大臣)からは以上です。
日米関税協議
【読売新聞 上村記者】米国による関税措置についてお伺いします。トランプ大統領は、日本との関係について「相互主義とは程遠い」として、25%の関税を8月1日からかけるという内容の書簡を公表しました。受け止めと、今後の政府としての対応と、これまでの交渉に対する評価についてお聞かせください。
【岩屋外務大臣】御指摘のとおり、米国時間の7日、米国政府から、我が国からの全ての製品に対して、25%の関税を課し、同時にその関税は8月1日から課す旨の書簡が公表されました。米国政府からは、既にこうした内容の書簡を受け取っているところでございます。
日米間では、御承知のように、これまで真摯かつ誠実な交渉議論が精力的に続けられてきております。しかし、現時点では、まだ日米双方が折り合えない点が残っており、残念ながら、この段階では、いまだ合意に至っておりません。
これは、日本政府としては、安易な妥協を避け、国益をしっかり守るということを方針に、交渉を続けてきているからです。求めるべきは求め、守るべきは守るという考え方の下に、厳しい協議を続けてきております。
今般、米国政府が、既に課している追加関税に加えまして、関税率の引き上げを発表したことは、誠に遺憾でございます。同時に、これまでの協議により、期限が延長されたということから、政府としては、先ほど開催された米国の関税措置に関する総合対策本部におきまして、石破総理から指示がありましたとおり、引き続き、日米間の協議を継続して、国益を守りつつ、日米双方の利益となるような合意の可能性を今後とも精力的に探ってまいる所存です。
外務省としても、石破総理の下に、関係省庁と緊密に連携協力をいたしまして、赤澤大臣による交渉を全力で後押ししてまいりたいと考えております。政府一丸となって、最優先かつ全力で取り組んでまいります。
【共同通信 阪口記者】今の話題に関連してなんですけれども、これまで赤澤大臣、度々渡米されたり、事務方の方々も協議重ねられてきたと思いますけれども、現時点で関税の撤廃であるとか引下げといった成果は得られていない状況です。それについてまず、大臣どのようにお考えになっているのかということ、今後の対米交渉の戦略を見直す必要性はどう感じていらっしゃるのかどうかお伺いします。これまで他国と協調した米国への圧力というか、交渉ということだったりとか、対米関税の引き上げということに対しては、かなり否定的だったかなと思うんですけれども、そういった可能性についても再考の余地があるのかどうかお尋ねします。
【岩屋外務大臣】赤澤大臣も6回、7回と訪米をし、また、今日も電話会談をしたと承知しておりますけれども、これまでの交渉を通じて、日米当局間の信頼関係というのは、しっかり醸成されてきているのではないかと思います。そして、いわゆるパッケージのかなりの部分については、歩み寄りもできてきているのではないかなと思いますが、交渉事は全部まとまらないと、話がまとまったということにはなりませんので、まだ埋められていないピースがあるということで、交渉を続けていることだと思いますし、先ほども申し上げましたとおり、なぜそうなっているかというと、やはり、我が国としては、国益をしっかりと守っていくと、守るべきは守るという考え方、方針の下に、この厳しい交渉に臨んでいるということだからこそ、なかなか難航していることだと思います。しかし、まだ時間も残されておりますし、引き続き、精力的に真摯に日米間の交渉を続けていかなければいけないと思っておりますし、外務省としては、赤澤大臣による交渉を全力で支えていきたいと思っているところでございます。
それから、今後の対応について、予断をもって申し上げることは控えたいと思いますけれども、米国との間では、可能な限り早期の合意を実現すべく目指してまいりますけれども、今お尋ねになったのは、例えば他国との連携などはどう考えているかということだったと思います。世界のGDPの4分の1を占める経済大国である米国による一連の関税措置は、世界経済全体に与える影響は非常に大きいと思いますので、こうした影響について、各国との間で意思疎通をしっかり行っていく、情報交換を行っていくということは極めて有意義だと思っております。
この交渉が始まったときから申し上げておりますけれども、日本政府として、あらゆる選択肢はテーブルの上に置いているわけでありますけれども、ここまで、粘り強く交渉を積み上げてきたところですので、今後も、引き続き、交渉によって合意を達成していくとの方針の下に、粘り強く、協議・交渉を続けていきたいと考えております。
日・カナダ情報保護協定
【朝日新聞 加藤記者】冒頭おっしゃったカナダのアナンド外相の訪日で、署名予定の情報保護協定について伺います。米など英語圏5か国の機密情報は、枠組み「ファイブ・アイズ」各国との情報保護協定が整いつつある状況でもあると思いますが、今回、カナダとこの情報保護協定を署名する意義についてお伺いします。
【岩屋外務大臣】このあと、私(岩屋大臣)とカナダ・アナンド外相との間で署名を予定しております情報保護協定は、日・カナダ間での国家安全保障分野の秘密情報を適切に保護するためにとる措置について定めるものです。
この協定により、両国政府間で有益な情報交換が、より一層行われることになると期待しています。
厳しい国際情勢、地政学的な状況が続いていく中で、G7の一員でもあるカナダとこの協定に署名できることは、その意味で、極めて意義深いものがあると考えているところです。
日中外相会談
【共同通信 阪口記者】冒頭、御発言ありましたASEANの訪問についてですけれども、ASEANの機会に中国との、王毅外相との外相会談などを調整されていれば、その調整状況について伺います。中国とは、日本の日本産水産物の輸入再開などの前向きな動きがある一方で、安全保障面などで課題も残されています。実現すれば、どのような議論をしたいかをお尋ねします。あともう一点すみません。日程なんですけれども、明日から何日までという理解で考えればよろしいか、外遊の日程についてもお尋ねします、よろしくお願いします。
【岩屋外務大臣】ASEAN関連外相会議における日中外相会談の実施については、この段階では、なんら決まっておりません。その上で、実施される場合の会談の内容について、この段階で予断するものではありませんけれども、中国との間では、これまでも戦略的互恵関係の包括的推進、そのことによって、建設的かつ安定的な関係を築いていこうという考え方の下に努力していくことを確認してきておりますので、今御指摘のあった、日本産水産物の輸入規制といった懸案などをめぐって、今、解消に向けた動きが見られてきているところでございます。これは加速していかなければいけないと思っております。
同時に、中国との間では、安全保障に関するものや、邦人拘束事案といった、課題や懸案が依然として残っております。したがいまして、主張すべきは主張し、中国に対しては責任ある行動を求め、残されている課題と懸案を一つずつ減らしていくことが重要だと考えておりますので、意思疎通をしっかり行って、具体的な成果を上げるために、最大限努力をしたいと考えております。
ASEANの外相会合は、明日出発して、12日土曜日に帰国する予定でございます。